いらないものだけが残る

鬱が進行すると、だんだん心が何も感じなくなってくる。普通に好きだったものが全然好きではなくなり、めちゃくちゃ好きだったものが、まあ少し好きかな、くらいになっていく。

味覚障害の人がどんどん濃い味付けをするようになる気持ちがよく分かる。


日々のちょっとしたことに喜びを感じられなくなって、とっておきのものを持ち出してきても以前のような喜びは得られない。


好きだったものを食べても、好きだった映画を見ても、好きだった音楽を聴いても、好きだったグラビアアイドルを見ても。


本当に自分がそれを好きだったのかどうかもよく思い出せないくらい、感動する機能が低下している。


しかし軒並み感情がやられているにもかかわらず、自分が感動を失っていくことに対する恐怖だけは不思議なことに健在なのだ。


こんなにひどい不公平が許されるのか、と。なけなしの怒りと悲しみが、絞り出されるように頬を滴り落ちる。


お願いだから、この恐怖も早くどこかに消えていってなくなってくれ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

日記 ながね @katazukero

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ