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先程よりさらに荒れた店内。
店内というには無理があるようで壁は崩れ、屋根は吹き飛び床は瓦礫と血で汚れていた。
そしてオレの前にピクリとも動かず倒れるウェマッツ=リーウヤがいた。
それもそうだろう。
なんせ首は少し離れた場所に転がっているのだから。
そして……名前はわからないが取り巻きの一人、ウェマッツ=リーウヤや怒鳴られていた青年も死んでいた。
手足をおかしな方向に曲げ体液をぶちまけ叩き潰された羽虫のように壁にめり込んでいた。
「どう言うつもりだ」
オレがいつのまにか後ろに現れた男に言う。
「どう言うつもりかはこっちのセリフだタコ
毎回毎回オレの店破壊しやがって!」
「いいじゃん、ちゃんと修理代出してんだし」
「そう言う問題じゃねぇよ!せっかくさ、お洒落なバーに改装したと思ったらこれだぜ?
見ろ、廃墟だ廃墟!」
先程から軽口を叩いているのは共に不老になった男でガキの頃から仲が良かったペペレだ。
こいつはいつも名前を変えているから覚えるのが面倒だ。
ペペレってなんだよ。
可愛い名前してるよな。
「そりゃあ、お前がとどめを刺したんだろうが」
ペペレ君、いいかい?
ウェマッツ=リーウヤによってだいぶ壊されていたかもしれないけど、君が斧を投げたからこうなったんだ。わかるかい?
せっかくいいところを見せようと剣を抜いたのにオレが串刺しにするより早く斧を投げて勇者の首を刎ねたじゃないか。
その余波で店が壊れて取り巻きが死んだんだ。
はぁ、これだから筋肉野郎は嫌なんだ。
筋肉をつけているやつって力で潰せばなんとか思っている節がある。
ほんと、頭がいいとは思えないな。
身体中筋肉で出来てんじゃないの?
そういえば頭には柔らかい肉が入っていてそこがものを考えているとか学者の奴らが言ってたな。脳とか言ったっけ?
じゃあこの筋肉ダルマは脳まで鍛えて筋肉が詰まってるから力でしか解決方法を知らないのか。
脳まで筋肉かよ……ふっ、全く。
脳筋…ぷふっ。
「あれ?ペペレ君どうしたのかな?顔が赤いようだけど風でも引いたかい?
まぁ、馬鹿は風邪を引かないというしそれはないか」
「最初から最後まで全部聴こえてんだよぉぉぉぉおぉぉ!」
あー、やっぱりこいつ揶揄うのおもしれぇわ。
ワザとに決まってんじゃん。
「そう?空耳じゃないかな?オレがそんなこと言うと…「思う「思います「言ってました「聞こえました「聞きました」」」」」
いや、君たちに聞いてないから」
せっかく揶揄っていたのになんでお前らが答えるんだよ。
「まぁ、それはいいとして」
「いや、それ、お前が言うセリフじゃねぇから」
話を変えようと口を開くと咄嗟にツッコミを入れるペペレ。
いや、漫才はいいから。
「漫才じゃねぇよ。
まぁいい。
たしかに俺が投げた斧によって光るイカした玩具を持った馬鹿は死んだが、こういう輩を集めてしまうお前にも問題があると俺は思うんだが」
「いや、理不尽な。
体質だから。
巻き込まれ体質なんだよ。
そう言う文句は神に言ってくれ」
「おま、不敬すぎんだろ…」
こいつ、正気かよ。という顔でこちらを見てくる。
「いや、ほらさ俺たちが不老になった時、神さんにあったんだよ」
「なん話今初めて聞いたんだけど」
「うん、今初めて言ったし」
「神さん、ってなんだよ様だろ。神さんとか、お前の奥さんか!」
「奥さんじゃなくてそれだったら旦那じゃね?だって、あってみたら、男の神だったんだぜ!?びっくりだろ。
それでな、女だと思ってたのになんで男なんだよって言ったら『聖職者は男ばっかし出し変態多いからじゃね?』って言ったぜ。うん?どうしたの?驚いた?」
「いや、いろんな意味驚いたわ。神様にタメ口とかさ」
「え?あー、そこかよ!まぁいいじゃん。畏まらなくていいって言うから……ってなんだよ」
話している途中でゴンスが白い目で見てきた
「無礼講だって言って軽口叩かれると自分は怒るのに?」
「………」
それに続いて白い目で見てくる部下達。
新入りはちょっと話について行けてないようで頭を傾げていた。
うーむ、なんもいい返せねーや。
「ごほんっ」
部下の一人がワザとらしい咳をしてさっさと話を再開しろよと急かしてくる。
「えーとですね。では、とりあえず、この死体はどうしますか」
オレが考えていた話を優秀なゴンス君が代弁してくれる。
えらいえらい。いい子だ!お礼になでなでしてあげようー!
「あ、そういえばさ、こいつらもしかして別の大陸の出身じゃないかな?って思ったんだけど」
「あー、ラシエトよ。残念ながら違うようだぞ」
「ええー!?本当?」
「失礼ながらペペレ様、勢いあまって殺してしまったことを有耶無耶にする為の嘘ではありませんよね?」
またもやオレが言おうとしていた質問を言う。
優秀過ぎてオレにはもったいないくらいです…。
それとだ、ゴンス、君は副船長なんだ。
そんな脳筋お化けに敬意を払う必要はないぞ。
「ゴ、ゴンス……お前もか。どうせ俺なんか…」
「嘘泣きはいいから早く言えよ」
「誰のせいだと思ってんだ!」
なんだ責任転嫁は良くないですぞ。
「はぁぁ……、こいつらは別の大陸から来た訳じゃないらしい。
別大陸ならお前らならすぐに一番乗りヒャッハーとか言って戦争ぶっかけに行ったかもしれないが残念だったな」
「オレらお前みたいな脳筋じゃないから」
「いいから最後まで聞けよっ!
……でだ。
こいつらは城に潜ませていた"影"からの情報によると異世界なる場所から特殊な転移系複合魔法陣で呼び出した存在らしい。
どうやら俺たちとは違う理を持っていて、ほらあの貴族のボンボンが喜びそうな光る剣の玩具みたいなのを呼び出すときへんな行動をしただろう。
アレでこちらの世界の力を使っているらしい」
なんか色々突っ込みどころがあってなんも言えねぇ。
「とりま、転移系複合魔法陣って何?お偉いさんが考えた政策の名前みたいだね!」
「なんだその例えは……転移系複合魔法陣ってのはな!
うん?なんだったかなぁ。俺は魔法使わないからよくわからないけど転移させた対象を超いっぱいの魔力で強化するすっげー召喚魔法らしいぜ」
「はい、5歳児の説明ありがとうございまーす」
「ざっけんな、教えてもらってそれかよ!」
「あ、それはどうでもいいんだけど」
「どうでもよくねぇよ、お前が言うセリフではないかなら?」
「はいはい、わかったわかった。それでさ、なんで城にお前のところの工作員がいるんだよ」
「わかってねえじゃん!わかってるやつはわかったっていわねぇんたょ!!馬鹿」
「馬鹿はお前が馬鹿、でどうなんだよ?」
「馬鹿じゃねえ、馬鹿はお前だ馬鹿がこれだから馬鹿は…。金を握らせたら入れた」
おいおい、皇国さんよ。
大陸一の情報機関をもつとか言うアレはなんだったんだよ。
ふつうにスパイに入られてんじゃねぇかよ。
世界一とか言っといて金で買収されてんじゃねえか!
「知ってるか?馬鹿って最初に言った方が馬鹿なんだぜ?」
「あぁ?ならテメーだろラシエトお前忘れたわけじゃねえだろうな?」
「うん、何を?」
「えっと、……あー、ん?あれー?」
「早く早くぅー」
「えっと、ちょっと待って」
「じゅう…きゅう…はーち…」
「えっと!あれだ!アレ」
「よーん…さぁぁーん……にー」
「ほ、ほ、ほら、アレ!わからないか!アレだアレアレが!」
「わかりませーん!はいタイムアップでぇーす
……馬鹿だと言われて言い返そうとしたのに思い出せないとか正真正銘の馬鹿じゃねぇか
恥ずかしくねぇの?
ガキからやり直せ」
「はい、孤児院で文字からやり直して来ます…」
「おいおいおい!まずはおはなしようなね?わかるかな?ペペレちゃん?」
「…ああ」
「よーしいいこいいこ!」
「調子のんじゃねぇ!!!」
腹殴られた
酷い…
「ぐぇ」
◇◇
「んー、まず、アイツらなんだったんだ?
皇国はなんであんな雑魚を呼んだんだ?
呼ぶなら悪魔の方が強くない?」
「平然と悪魔の方が強いとか言ってるけど皇国は悪魔廃絶派だろうが、んなことを掲げている大元が強いから『悪魔呼びますね』『はい、わかりました』なんてありえねぇだろ。
あとな、俺も思ったんだが奴らいくらなんでも雑魚過ぎだろってな。
だがな、奴らにだけ見える"エイチピー"とか"エムピー"とか"レヴェル"とかあとは"ケイケンチー"言うのがあるらしくてな…」
なげーな、いつまで続くんだよ。
あ、それ聞いた聞いた。
早く核心を言ってくれ。
「あー、それ聞いた聞いた。
そこで首転がってる奴が『俺の"ケイケンチー"になれ』とか言ってたし、最初に逃げ出したやつが、魔力を飛ばしたあと"エイチピー"がなんとかって言ってたな」
「流石にこれについてはそんなに良く分からなかったんだが、推測するに殺すと"ケイケンチー"なるものを得て強くなるらしい。それが"レヴェル"とか言うやつで数値が高いほど強い的な感じらしい。
ちなみにな、召喚したのは皇国魔導管理長なんだが奴の"レヴェル"は203らしいぜ」
「誰?その人」
いきなり知らない奴のことを聞いても参考にならないからいらないよ。その情報は。
「は?マジかよ、皇国に住んでるなら知っとけよ。
皇国最強の魔導師だぜ」
「知らん」
は?マジかよ、そんな奴いたんだ…
「だから今言ったんだろ!」
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