革命により貴族は滅びました〜元辺境伯三男坊は市長になって甘い蜜を吸って生きたい
あらすじ
貴族制の解体により領地を剥奪された貴種たちは、その多くが過去の栄光を忘れられず金を使い落ちぶれた。賢明な選択をした少数の頭の回る貴族たちは、コネを使い領主までは行かずとも都市の管理者……つまるところ市長となった。
ベルヴィル・モーラ・ロロリウスはアレス王国建国時から存在する大貴族の三男であった。
一般市民が武力発起した時、彼は貴族が近いうちに解体され、王族や大貴族は処刑されてしまうだろうと考えていた。
そこで早いうちに家を出て革命軍に自分を売り込んだロロリウスは、貴族制廃止後、元貴族を纏めるリーダーとして抜擢される。
ロロリウスはいいように一般人に利用されるつもりはなかった。上手く革命を乗り切った頭のキレる貴族たちと今までと変わらぬ優雅な生活を送るため、貴族として持って生まれた魔法という力で、荒くれ者を纏め、商人を脅し、コネを使い、マフィアという形で復権を試みるのであった。
◇◆
まさか貴族制が解体されるなんて……!
その言葉は今や負け犬の遠吠えに等しい。
数ヶ月前、革貴族以下の一般人からなる革命軍により各地が襲撃され王族含め、多くの貴族が処刑された。
我が父、ベルヴィル・ベラ・マーシャルも広場に引きずり出され醜く喚いたのち、首を落とされた。
貴族の処刑、王政・貴族制の廃止、領地制の廃止、御用商人の断罪、騎士団の解体。
建国から850年、長らく続いたアレス王国は反乱軍によって解体され、世界で始めての共和制の国へとなったのである。
我輩、ベルヴィル・モーラ・ロロリウスは辺境伯三男であった。
しかし、革命軍と名乗る領民の集団の勢いが止まることを知らず、多くの商人、職人の後ろ盾を得ていることの危険性に気づいた我輩は、革命軍に自分を売り込みに行った。
貴族たちは、自分たちが魔法という力を使えることを理由に最後まで楽観視していたが我輩はやがて貴族が解体される時代がくるとは思っていたので、対応は早かった。
革命軍の思想を理解した貴族として革命軍のリーダーに面会した我輩は、彼らのやり方に疑問を覚えた。
貴族や騎士、王政と言った一党独裁を廃止し、市民の市民による市民ための政治を行うと掲げていた。
しかし、革命軍は思想家ばかりだった。
思想はいくらでも理想が築ける。
しかし、我が国を解体して共和制を築いても、周辺国がそれを許さないだろう。
何せ、世界の国は全てが王政である。
必ず叩き潰そうとしてくるだろう。
解体した貴族は誰が管理する?一般人と一緒に住まわせる気か?
奴らは魔法という力を持っているのに?
騎士団を解体したらどう治安を維持する?
御用商人を断罪するのはいい、しかしお前たちのスポンサーの商人連中も一つや二つは悪いことをしているだろう。そこのところをどうするんだ?
お前達は、そもそも国の運営方法はわかるのか?貴族を解体した後誰が都市を管理するんだ?どうやって国の運営費は捻出するんだ?税は?戸籍は?身分は?
そうした質問に煮え切らない返答を返すばかりであった。
革命軍の思想はそれは素晴らしいものだ。誰もが平等な社会。
全く持ってダメダメだった。
革命軍が革命を成功させた後、上手く国を運営していくためにはある程度有能な貴族を残す必要があると我輩は説いた。
革命軍のリーダーは良くも悪くも素直だった。
我輩は、来るべき日に備え有能な貴族を選抜し、未来の共和制国家を支える人員として革命軍の中枢に潜り込んだのである。
我輩は、革命軍補佐および外部相談役兼元貴族管理者として、革命軍の中枢を担った。その肩書きを盾にこれから我輩の真の計画に必要になる有能な人材を保護していった。
残念ながら王族は幼子残らず処刑されてしまったが幸運なことに王国の切り札、影の一族を率いれることが出来たのも革命軍たちが貴族社会に疎く、王国の秘密を知らなかったことにある。
貴族制が解体され、領地も都市ごとの管理へと変化した代官は解雇され代わりに商人や我輩が選抜した貴族、それから革命軍のメンバーがその代役の担った。
我がベルヴィル辺境伯領もその煽りを受け12の都市と38の村に解体された。
貴族制の領地時代、その領地と関わりがあった土地に関係者を配置しない、という法案により我輩は、遠く離れた都市を管理することになった。
そう、今日から我輩はベルヴィル・モーラ・ロロリウス改め、カルナバル海溝都市、ロロリウス市長となったのであーる!!!!!
フ、ふはははは!我輩を革命軍に入れたことを後悔するがよい。市長室から覗く煌めく海を見て我輩の真の計画が始まるのだと胸が熱くなった。
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