第16話 地球にダンジョンが出来たのはいいけど、背中から触手が生えて《紳士》などと呼ばれるようになったのは困ってる
あらすじ
日本がアメリカに勝ち帝国を築いた世界。
日本最大の財閥 四ツ菱 陽ノ久仁(ヨツビシ ヒノクニ)の次男 四ツ菱 邦彦(ヨツビシ クニヒコ)は帝国の首相である。彼はアメリカ征服の際原住民から強奪した秘宝を使い世界を書き換えた。
世界中でダンジョンと呼ばれる異界が現れ混乱を極めた。
帝国に住んでいた主人公(来栖 香)は運悪く世界最初のダンジョンに飲み込まれてしまう。
戦いを知らない一市民だったのに…
地獄のサバイバルが始まる!
◆◇1
深夜0:22
大東京府帝東区上野記念公園は厳重体制が敷かれていた。
バリケードで敷地内に繋がる道が塞がられ、警察車両や帝国軍から出動している軍人達がライフルを構えている。
上野記念公園といえば帝国記念像や、新上野動物園、帝国立大学病院などがある。
お上りさんたちが向かう大東京府の観光スポットといえば、上野記念公園、帝国中央タワー都庁、皇居などである。
その一つ休日、平日問わず賑わう人気スポットである国立科学博物研究図書館に今巨大な荷物が運びこまれていた。
深緑色のトラックから降ろされたソレは慎重にクレーンで吊り上げられていく。
辺りでは白衣を着た怪しげな集団とギラギラとバッチをつけた軍人、黒いスーツに四ツ菱のマークをつけた政治家の男が見守っていた。
それぞれ、帝国秘密科学研究所、帝国軍第800号人造兵隊少佐 参武陸(サブロー)
、四ツ菱 邦彦(ヨツビシ クニヒコ)という。
四ツ菱財閥の次男である四ツ菱 邦彦は大東亞帝国中央政府首相にしてこのプロジェクトの発案者である。
書類は全てが黒く塗りつぶされ内容は国家秘密であった。
この日の為に上野上空を通過する他国の衛星を全て撃ち落とし、軍を集結された。
持ち上げられていた荷物は地響きを立てながらぱっかりと空いた地面に吸い込まれていく。
これも国家秘密である地下施設の入り口だ。
面は帝国と属国から集められた今日な博物品が収められ、地下には面に出せないブツが格納されている。
宝物が集中しているため一ヶ所を防衛すれば良いという面から色々集められている。
「陛下、格納が完了しました」
白衣を着た白い髪の老人が敬礼をしながら四ツ菱首相に報告をする。
「では行こうか」
そう告げて肩にかけるように羽織っていた黒い軍服をバサッと広げ来た道を戻り出した。
「はっ!」
「……」
格好つけるのはいいが毎回されるといくら首相でもムカつくなと少し苛立った感じで口元をピクピクさせながら続く少将。
少将と同じなのかため息をつきながら銃を構え護衛する軍人たち。
少し離れたところに停車していた黒い車四ツ菱自動車の新型首相用特別車両に乗り込み車は静かに発信した。
速度を上げ時速60kmを超える頃には車は完全に透明になっていた。
光学迷彩によって姿を消した首相を乗せた車は街に消えていく。
「時は近い……漸く四ツ菱の悲願が叶うのだ……もう少しだ」
そんな意味深な言葉を呟いて首相はふかふかの座席に身を任せた。
◇◆2
夏の暑さがきつくなるころ。
ジリジリとした日差しと中華料理のように蒸された空気にやられ緊急搬送される人々。
やれ水分補給だ。やれ水中毒が危険だと。メディアは報道する。
借金取りの如く集金にやってくる某局の7時のニュースでは例年に比べて2°暑いとか異常気象がどうのこうのと報道している。
ーーまったく、毎年のように異常、異常、異常。というが、異常も毎年のように言われれば危機感が下がってくるものだ。
"ひーとあいらんど"とかよくわかんないし、まあそういうやつなんだろう。
いちいち異常気象がどうたらなんて難しいことを言わないで
『毎年少しずつ暑くなってます。』
うん、これでいいじゃないか。
簡単、わかりやすい!
目の色素が薄い俺には少し日差しが厳しい。
日向にでると目の前が真っ白で何も見えない。
だからといってサングラスはしない。
気分だけど、『ハッハッハッ!俺はたとえ眩しくとも日の力如きには屈しないのだぁ!!』
自分の頭の中で叫んでみたがこれはなかなか馬鹿みたいだ。
無意識にぶつぶつと呟きながら下を見て歩く姿はさぞ不気味であろう。
それが俺、来栖 香そのひとである。
誰だよというツッコミは聞かなかったことにしてやる。
最寄駅の地袋から山手線に乗り新都上野駅で下車する。
ピッ…
帝国本土出身の学生と軍人に与えられる帝国通帳(TESUMO)を使えば、ただで首都圏は移動可能だ。
まったく、最高だな学生は。なんせ、タダだ。いくらタダでも軍人は勘弁だ。
そして今日とて今日も長期休暇の大学生の俺は博物館に通う。
帝東技術開発大学一年生の俺は高校から推薦入学で入ったのだが、一重に技術開発といえどプログラムやマシンの開発だけではない。
俺がいるのは、いざその技術が人間にも動かせるのかを実験するというクラス?いや研究室みたいなところだ。
理論上とかコンピュータシュミレーションではなんてお偉いさん達は言い訳がましく言ってくれるが大概は人間には動かせない。
が、世界を探せばそれに特化した人間はいる。
そんな感じで俺もフルダイブ型VRの開発の研究に付き合わされている。
特に神がかった戦いが出来るわけでもなく、ロールプレイが様になっているという話でもない。男なので可愛くもないし、モブだからカッコよくもない。
『何故お前みたいなのが入れたんだ!』
よく言われる。よぐいわれ"まず…うっ、ひっく…。僕が入っちゃわるいんですか!
…
……ふっふっふ。
舐めてもらっちゃわるいなぁ。
馬鹿にしている奴らもやっているフルダイブ型VRゲームの人外、つまり異形種と呼ばれるスライムや虫、人魚のようなものを正常に動かせる技術に俺は貢献してんだよ。
俺が生まれる前からとっくにフルダイブ型VRは現実のものになっていたが、異形種は存在しなかったし、存在しても人型に羽やツノなどの部品が付いている程度。しかも自分で動かせない正真正銘の飾りだった。
治験と呼ばれるグレーな団体はフルダイブ型VRで人間は異形種になれないのかという実験を行なっており、結果的に非道な実験だとしてメディアに叩かれていた。
その理由はいくつかある。
まずは、ほとんどの人は上手く動かせず給料がもらえない。
まあこれはそんなに非道に思えないかもしれないがかなり非道外道人でなしの所業だ。
長い拘束時間と相当な覚悟を必要とさせておいて、動きませんでした→じゃあ帰れ、無能にやる金はないと追い出すなんて。
次に、人間は異形種、人間の姿から遠ざかるほど混乱して頭がおかしくなる。
さらに無事戻れたとしてもうまく体を動かせなくなる。
さらに、さらに、プレイする時間が長いと人間としての理性を失っていく。
まぁこれは自己責任だから治験に罪は3割くらいしかないだろう。
そこに興味本意で行った俺は運命に出会った。
何興味持てる要素があるんだよと思うかもしれないが昔から厄介ごとに首を突っ込むのが好きで、凄いヤバい匂いがしたこの実験に参加したのだ。
答えは当たり。
しかも、戻っても人間のままを保ち、プレイしても操作が上達するだけ。
つまり研究している人からしても初めての当たりだったらしい。
研究員の人にも『君は前世はスライムだったのだろうね』なんて言われた。
誰がスライムな雑魚だコラぁ
これ……褒め言葉なんだよな?
それから高校に行きながら治験に通い生活を出し高校2年生の時、世界で初めて異形種対応のフルダイブ型VRMMO【final Stage ☨ cross drive】が発売された。
それでゲームの運営元の技術大学が高校に俺を推薦するように権力で脅した結果俺は見事合格、一流大学のエリート学生になったのだ。
ただ、開発には時間がかかる為、今回はお暇を頂いたのだ。
『お前、ジャマ、ゲームするか、どっかいけよ。』と
ところ代わりましてこちら国立科学博物研究図書館という、えーっと……長ったらしいわ!
日本帝国最大級であり地上3階、地下5階からなる。
どうやら政治家さん達には活字中毒が多いらしく、そういう名前が多い。
だがいちいち会話でそんな長い名前、というより正式名称を言うわけがなく俗に言うと『かはく』である。
(※ニロニロ辞書参照)
国立大学に通う学生は国立の施設の使用は無料であり列を無視して入れることから学生証を重宝している。
警察が身分証を提示して「警察だ」の一言で入っていけるように俺たち学生も「国立学生です」といいながら学生証をちらつかせるだけですんなり入れる。
ご印籠のような存在だ。
しかもだ。
これだけではなく、『かはく』の職員エリアも入れてしまう。
俺が何度もここへ通うのはそういう面もあるからだ。
この前見た、古代遺跡から出土したウズマの秘宝とやらを見たがタダの石だった。立方体の石で表面に謎の文字?のようなものが刻まれており、職員の人は昔儀式で使っていた道具だろうとか言っていた。
これは職員エリアに保管されているものだけれど、普通の人が観れる展示エリアにもこのような品は多く存在する。
一番好きなのは、本館地下2階にある遺跡コーナーだ。
なんとここには本物の遺跡の一部がまるまる保管されており中にも入れるのだ。
これらは帝国が属国から略だt……おっと
献上されたものだ。
ちょっと可哀想だが、まぁ遠い国のことだし、はっきり言ってどうでもいいしな。
「ーーーおいっ!!見ろよこれ、昨日のお前の寝顔みたいだな!」
「ギャハハハ、うわ、マジでタカシじゃねぇか!」
「ウッセェ!」
ーー煩いのはお前らだ。
おい黙れ、ここは博物館だ。お前らのような知性低き低脳なゴミのような山猿はここに来ていいわけがない。
ここは人間様の為の施設だ。
お前らの来る場所は間違っているぜ。
隣にある上野動物園に帰りな。
「なんだとテメェ!?!!」
おっと、声に出ていたか。すまない、まさか猿に言葉がわかるとは…。
「あっちゃん、コイツ、シめましょう」
「最初からそのつもりだ」
え、あっ。…ちょ!?
こここ、ここは国立施設だから。えーそういうのはよく、ないんじゃないか…な?
あっははははは…
軽くいい訳をしていた俺の腹に腰を入れた力強いヤンキーパンチが減り込む!
が、その瞬間後ろに飛び抜きっ、なんてことは出来ない!
洗練された動きで半身になり紙一重で避ける…訳でもなく!
迫る拳よりも早く放たれた手刀が首を刈り取り!これをやってら犯罪だわ。
「ゔっ……ぐ……げっほ…ぁ」
主人公ぶってチンピラに絡んだ俺を助けてくれる脇役は存在しなかった。
主人公になれない俺にはこんなものか。
思いのほかいいところにめり込んだせいでなかなか動けずそのあと何分も同じ場所にうずくまっていた。
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