第15話 錬金狂いの無限転生者〜ひたすら同じ世界に転生して錬金術で秘密基地を作り続けている
あらすじ
チートを持たない男による狂った転生記である。
自身が生まれ変わったことに気づいて死ぬ前に輪廻転生の魔術を完成させた主人公は地上に住まうありとあらゆる生命を犠牲に転生した。
幾度か繰り返すうちに効率の良い方法を見つけたこのイカれた錬金術師は子供の頃の夢を実現する為、転生を続ける。
カッコいい秘密基地を作るために!
◆◇
俺は幸運だった。
1度目の人生、いやそうというより自分が生まれ変わったと知覚できたこと、そして同じ世界に生まれたこと、それが偶然で、何しろ転生という現象を観測し、それを解明出来たこと。
幸運だった。
例え、親に捨てられたとしても、仲間の裏切りで死んでいたとしても、何を差し置いても同じ世界で何度もやり直せる神の御業を人の身で再現できたのだ。
転生と言うのは、死んだ生物の中からいわゆる魂と呼ばれる謎の物体が身体から離れ何処か違う空間に吸収されたのち、違う生物として生まれ変わる現象である。
畑で同じ作物を作り続けると病気になるという現象があるがそれと同じで、人間から人間に転生し続けると魂に異常が発生する。
であるためかほとんどの転生は元の生物と違う生き物に、そして記憶を消去され新たな生命へと生まれ変わる。
輪廻転生……そう名付けた魔術は、本来消去されるはずの記憶を魂に刻み、世界軸・種族を固定し、生まれ直す神に対する叛逆のようなものだ。
だから誰にも話さなかった。
再度言うが自分は幸運だった。
たまたま知性ある種族に生まれ、それがたまたま同じ種族に生まれ直し、そしてたまたま前世の記憶があった。さらにたまたまやり始めた錬金術という分野にて転生の糸口を発見し、ぎりぎりで死ぬ前に輪廻転生の魔術を開発出来た。
最初の人生の時、自分には夢があった。
この世界には遥か昔に優れた魔法文明があったという。
彼らは地下に巨大な都市を建設し天空より迫り来る脅威に備えたという。
現在では地下都市は魔物の巣窟……ダンジョンと呼ばれる異空間へと変化しているが、自分も地下都市を作りたいと思った。
1度目の人生は金はあった、人もいた、発想も良かった、ただ時間がなかった。
今なら出来る。
転生して生まれ変われる今なら!
都市とは言わなくても地下施設くらいなら出来るのではないだろうか?
そんな期待を胸に、薄く眼を開いた。
ああ、そろそろお迎えが近いな。
次はどんな風に生きようか。
ああ楽しみだ。
死ぬ寸前というのはいつもこう、嫌な気分になるものだ。
やっぱり、来世は孤独に生きよう。
今世の俺は我ながらなかなかのクズだったと思う。いやいやながらも親戚のススメで妻を娶り結婚して、なんとなく子供を産み、子育てが大変な時期に姿を眩ませ、帰って来たと思えば国で危険な魔法兵器を暴走させた罪で国外追放。親として自身が大好きな錬金術以外何も教えなかった。
そして、自分の目的のために立派な錬金術師になった子に手伝わせた。
そんな親を笑って許してくれた。
全く、あの無愛想な妻と錬金狂いと言われた俺から生まれた子がこんなにもいい子になるとは……。
死が近づいているのを感じる。
魂に刻まれた輪廻転生の魔術が作動し記憶を保存していくのがわかる。
最期だ、言わないと、な。
「エンディ…よ。
私はもう……ち…かい。
言いたいことは、そこの棚の…中に入って…ゲホッ…グ…いる…からな。
ふぅ……いいか、聞け。」
思わず咳き込みそうになる喉を無理矢理魔術で縛り声を張り上げた。
泣くなよ、やめてくれよ。
最期だけど最後じゃない生まれ変わる。
生まれ変わった先で後悔してしまいそうだから泣かないでおくれよ
「実家の部屋、わたしの机の裏に、ある、魔法陣を起動せよ、さ、すれば、秘密の、扉が、開かな、れる……筈だ。
扉の中には、私が作った、中で自信作の、ゴーレムが、あるっ!!グッ…ガ…
それを使えば、世界、征服も、可能だろう……何も、
いや、錬金術しかしてやれなかった、すまない、せめてこの……ゴーレ…ム………で……世…か…とる……し…ろ」
いいたかった言葉を言い切る前に暗闇に引き込まれた。
体が動かない。
寒い。
ジリジリした感覚を覚える。
全くもって嫌な空間だ。
死んだ。
この空間は転生時に通る暗黒の世界だ。
この世界の時間は停止しており魂以外は動くことが出来ない。
ここからが勝負だ。
この暗黒の世界には大量の魂がある。
それを喰らって転生しなければならない。転生までは制限時間がある。
体感時間にして0.1秒の時もあれば永遠と感じる時もある。
ただ輪廻転生の魔術には大量の魂を必要としており時間が許す限りここで喰わなければいけない。
さもなくば、魂が足りなくなろうものなら地上にて1000万のありとあらゆる生物の命を奪い、世界を絶望と血の海に沈めなければならなくなる。
そんな面倒な作業は2度とごめんだ。
魂になっても人間としての仕草が抜けない俺はふぅと思わず溜息をついてから近くを漂っていた少女の魂に喰らい付いた。
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