第21話 手紙3(つむぎ→玲)

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Dear 玲くん


 お返事ありがとうございます。

 玲くんの便せん、とてもかわいらしいですね。意外でした。意外な玲くんの一面を覗き見ることができて、受け取った手紙をニヤニヤしながら何度も読み返しています。

 やはり、手紙にして正解でした。


 さて、まずはご報告申し上げます。

 本日、イルミネーションスポットの入園チケットを二枚購入してきました。

 レビューだの会談だの、そんな悠長なことは言わないでください。もはや、後には引けぬ状況です。


 玲くんは人込みが苦手ですか? 

 実をいうと、あたしは苦手です。背が低いこともあって、人込みに入ると息が苦しくなってしまいます。背の高い玲くんが羨ましいです。

 きっと、映えスポットは猿山のように人が密集していることでしょう。

 でも、満を持して人込みに入ろうという、あたしの心意気を買ってください。


 背が低いといえば、あたしが顧問を務める女子バスケットボール部の女の子たちも、総じて背が高いです。外部から来ていただいているコーチも背が高いです。バスケをやれば背が伸びると聞いてひそかに期待していましたが、成長期を過ぎたあたしには効果がありませんでした。

 満員電車で足が浮く体験をしてから、両親の遺伝子を恨めしく思わない日はありません。


 そうそう、学校には普通に戻れました。

 玲くんに言われた通り、生徒にも先生にもインフルエンザだったと言い張り、貫き通しています。

 クラスではいつもふざけている男の子たちが、本質を突くような質問で心を抉ってきますが、あたしは毅然とした態度をとり続けています。おかげで鉄のインフルエンザーという称号をいただきました。インフルエンサーとかけているようです。大変不名誉です。


 話がそれました。イルミネーションの話ですね。

 クリスマスの定番といえばイルミネーションでしょう。

 ベタですか?

 ベタですね。

 ベタでもいいんです。ライトアップされた美しい街並み、光で彩られるアート、天に向かってそびえたつ大きなもみの木。いいじゃないですか!

 あたしも一人の女の子。大人なムード漂う夜を過ごしてみたいと思うのです。

 そこ、笑わないでください。

 廊下に立たせますよ? 立石先生も怒ると怖いんです。

 ですから、あたしはエスコートを所望します。

 人込みに紛れてはぐれてしまわないように、あたしの手を取っていてください。

 これは盟約です。破ったら恐ろしい罰則が待っています。

 

 期待しています。


               立石つむぎ


 P.S.

 チケットは玲くんのクレジットカードの番号を使って買っておきました。

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