7th:黒之主と楓(過去)

楓:………ね、ずっと気になってたんだけど。声ははっきり聴こえるのにあんたの姿が見えない、何故だい?


ヨアヒム:それは…貴女様が既に亡くなっているからですな。死者にとって、姿など何の意味も成さぬのです。


楓:ふーん、そうかい。それはちょっと残念だ。


ヨアヒム:ほぅ。それは何故ですか、楓様?


楓:声だけじゃ、大事なことは伝わんない。あんたの言いたいことは言葉を聞けば良い。でも……あんたの想いは、少しも感じ取れない。


一方通行で受け流してるような、そんな感覚なんだ。表情や仕草も、全部引っ括めて会話だと思うよ、あたしは。


黒之主:(さすがは我の楓……!やはり我の目に狂いはない、些細な事もあまさず気にかける……)


ヨアヒム:(………む。主人の愛が駄々漏れになっておられるようだ。何時もの事ですが、愛の力とは素晴らしい……)


なるほど。私は自分を隠す生きざまだったゆえ、表情など必要ありませんでしたからな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る