第2話 一歩と衛
「今日も良い事ありそうだぞ」
現代には珍しく朝からポジティブな発言をする男。この男の名は「道長 一歩」 岐富高校に通う2年生。性格は明るく行動的。勘がよく当たるので周りから少し不思議に思われる事もしばしば。今はGWである
。
一歩)「今日は絶対に良い事がある!外に出よう!」
一歩が玄関を開けると眩しい太陽の光が一歩を歓迎しているようだった。心地よい風が「約束の丘」の方へ突き抜けた。 一歩も風の後を追うように約束の丘を目指す事にした。一歩が約束の丘を目指してしばらく歩くと目の前に同じクラスの「鈴山 衛」が歩いていた。
一歩)「お、衛じゃないか」
衛)「やぁ、、」
鈴山 衛は暗い性格で人と話すのが苦手だった。自分の意見を話した事が全て否定されてしまう気がするのである。このGWは誰とも関わる事なく過ごすと決めていた。そのため一歩に出会ったのは小さな災難に感じた。。
一歩)「休みの日に会うのは初めてだね」
衛)「そうだね、まぁボチボチたのむよ」
僕はこの災難からを適当に流して逃げようと思った。しかし一歩が人懐っこいオーラ全開であった為、逃げる事ができなかった。
一歩)「いつもより元気がないみたいだけど、どうしたの?」
衛)「実は、、、」
僕は驚いた。普段から根暗な為、落ち込んでいても誰も気づいてくれない。まぁ気づいても誰も気にしないだろうけど。でも一歩は簡単に気づいたのだ。困った事に一歩の雰囲気につられて悩みを言おうとしていた。一歩からは太陽のような温かさを感じた。でも何でも受け止めてくれるような強い芯も感じたのである。
【心を開く力は心にある】
一歩)「何か自分が嫌になるような事があったのかい?」
衛)「まぁ。う~ん」
僕は悩みを言ってもいないのに、なぜ自分が嫌になったて分かったんだろう。不思議な人だ。
一歩)「きっと大丈夫だから言ってみて」
太陽オーラから逃げるすべも無く衛は話し始めた。
衛)いや。さっき、困っているお年寄りを見たんだけど、無視してここまで来てしさ。 何か情けないというか、臆病というか。。。
一歩)凄いじゃないか!!
一歩の今の一言がなぜか衛の体内に心地よく響いた。
衛)え。だって。。。
一歩)気づく力ってとっても大切なんだよ。助けてって声を気がつかない人も沢山いるよ。今からでも遅くないよ。その人の所に行こう!
衛は一歩に言われて少し元気が出た。
【ただ悩みを聞いてもらうだけども人は楽になる。人は励ましによって元気が出る】
僕も一歩と共に戻る事にした。全速力で走る一歩を追いながら。 しかし一つ疑問に思う。困っている人がいた場所は言ってないのに、躊躇なく先を走る一歩。そしてその先に困っているお年寄りがいた事。不思議に思いこの疑問を尋ねると「SOSセンサーに決まっているじゃないか!」と言っていた。ようする直感のようだ。お年寄りは落とし物をしてしまい探しているうちに迷子になってしまったようだ。僕は現在地と帰り道を教えた。その間に一歩はお年寄りの落とし物を発見していた。僕は落とし物を簡単に発見できた事を不思議に思い、理由を聞くと「お助けセンサーに決まっているじゃないか。」と言っていた。ようするに直感のようだ。その後、お年寄りは嬉しそうに帰っていった。衛は少しスッキリした。
【どうしたかと考える前にどう行動するかである】
僕は一歩に感謝の気持ちを伝えこの場所から去ろうとすると
一歩)「衛は今からどこに行くの?」
衛)「うーん、約束の丘に行くつもりだよ」
一歩)「俺も約束の丘に行くつもりなんだ。一緒に行こうよ」
衛)「奇遇だね。なら、、一緒に行こか」
僕はひとりで約束の丘に行こうとも考えた。でも一歩の友情オーラ全開であったのでこの災難から逃げるのを諦める事にした。でも不思議と足取りはとても軽かった。
一歩)「やっぱり約束の丘からの景色は綺麗だ」
二人は約束の丘にある芝生に腰を下ろしながら色々と語り合った。目の前には青空が広がっていた。二人の心がそのまま空に反映しているかのようだった。
一歩)「そういえば衛は夢とかあるのか?」
一歩の唐突な質問に衛は戸惑った。人に夢を語るのは恥ずかしい。
衛)「いや、別にないかな。。。一歩は夢とかあるの?」
一歩)「うん。世界平和」
衛)「変わった夢だね」
一歩)「そうかな。平和って事は皆が朗らかに笑ってる事だろ?そんな世界、凄いと思うけどな」
衛)「規模が大きすぎて分からないような。そう思うようになったきっかでもあるのか?」
一歩)「特にないよ。昔からいじめが嫌いで、そうせなら自由で笑ってられる世界がいいなと思って。それって結局、世界平和って事かなーってさ。
僕は少し違和感を覚えた。理由がないと言う割には何か遠い過去の記憶を話しているような感じだった。視線も遥か遠くを見ているような。
衛)「でもそんな事言えるって凄いな。馬鹿にされたりしないの?」
一歩)「夢って自分の物だろ。馬鹿にされても気にしないよ。むしろラッキーだよ。君たちでは見えない所に僕の夢があるんだからって思うかな。」
一歩の超絶ポジティブシンキングについていけない所もあるが「夢は自分の物」この言葉だけは衛の心に深く刺さったようだった。
一歩)「それで衛の夢は?」
実は僕は自分の夢を言おうか少し迷っていた。一歩には言っておかなければならないような気がした。その心を見透かしたのか一歩はもう一度聞いてきてくれた。
衛)「僕の夢は、、どんな人からも頼られる人になること。、、、どんな人も守れる人になりたいな!!」
一歩は一瞬、言葉が出なかった。夢を語る衛があまりにも勇ましかった。要塞のような。
一歩)「とっても、とっても素敵な夢じゃん!どうしてそういう夢を持ったの?」
衛)「幼い時に祖母からとある説話を聞いてさ」
一歩)「どんな説話?」
衛)「むかし無実の罪で捕まった男がいたらしい。無実の罪が晴れないまま死罪が確定したんだって。その時、助けてくれた人がいたんだ。でも今度は日命の恩人が何かの罪で死刑にあったみたい。その時、恩ある男は来世では必ず恩返しすると守護を誓ったみたいなんだ」
一歩にはこの説話を聞いて不思議な気持ちになった。初めて聞いたのに知っているような。とても不思議だったが大切な感情だった。
衛「まぁ祖母がその話をする度に僕に何でも守れる人になれって言うからその影響だと思う」
一歩)「教えてくれてありがとう。俺らの夢、絶対に叶えよう。そうだ、話してくれたお礼に僕の宝物を見せてあげる。
一歩が見せてくれたのは半分に割れている石でできたネックレスだった。
衛)石が半分、かけてるみたいだけど?
一歩)この丘に来た時に半分に割れている石を見つけてさ。あまりにも綺麗だったからネックレスにしたんだよ。もしかしたら、この半分の石を誰かが持っている気がして。
衛)本当に綺麗な色だね。もしその石が一つになる事があれば凄い事が起きそうだね。
一歩)うん。そんな気がする。
一歩と衛が会話に花を咲かせている内に空の色は青からオレンジへ変わっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます