第55話

「くそっあの女」



「…?」



俺は不機嫌そうに悪態をつく第一王子とすれ違った




今日はアナスタシアにある約束を取り付けていたのだが、先に来ていたのか?


2回ノックすると彼女の返事が聞こえた



「入るぞ?アナスタシア」


赤いドレスを着飾った彼女が椅子に座っていた


「ミモザ、私の客人です少し席を外してくださる?」



「かしこまりました」



そういいつけてメイドは部屋から出ていった




護衛もつけずこの部屋には俺と彼女の二人きりだ


警戒心がないのか?


「ようこそおいでくださいましたレオン=シルビア」


「挨拶はいい。毒はもう抜けたか?」



「えぇ、部屋まで運んでくれたことお礼も言ってませんでしたね。ありがとう存じます」




俺の知っているアナスタスタシアは養子に入る前までは会っている



だがこんなに、ティナにしか向けられなかった穏やかに笑う彼女を俺は知らない


初対面の時から少し違和感を感じた



「お前…誰だ?」




「昨日も申し上げた通り、私はアナスタシアです。それ以外の何者でもありません」


「だったら何故そんなふうに笑える?護衛もつけず何を企んでいる」




「企んでいるわけではありませんよ。取引するには対等に対話する必要があります」



「取引だと?」



「私はここ数日何者かに狙われています。理由を探していてもきりがありません。普段であれば受け流すのですが、ここへは婚約をしに来ている。私だけならまだしも周囲を巻き込むのは外交的にも好ましくない。なので貴方には主犯格を見つけ出してほしいのです」



「ほう?それで?見返りは何だ?」




「私の首でもなんでも持って行ってくれて構わない。」


俺が無抵抗の奴を殺せないと知っておきながら首を差し出す?

ふざけるな



「ふざけるな!お前は婚約者であり俺の妹分のティナを見殺しにしておいて、今更俺に殺されることを望むというのか!?」



「貴方が、それを望むのであればそれでいて構わない。ティナも望まれてほしかっただろうから」




「…っ!お前に要求するのはただ一点だ。ティナの最期の情報をよこせ!」




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