第54話

私の予感は幸いに外れ何事もなく朝を迎えることができた



しかし、今日はレオンが訪問する日でもある




さて…



「アナ様、赤と青どちらの衣装にいたしますか?」



鬼の種族には珍しい銀髪に赤い瞳、どの色を着飾ったところで目立ってしまうことには変わりない


何より、急遽婚約の日までに二人のどちらかを選ばなくてはいけなくなった

「ミモザはどの色がいいと思いますか?」


「そうですねぇ。今日は朝から雨が降っていますし赤にいたしましょうか?」


「それで構わないわ。」



髪を結っている間少しでも考え事をしたいところだったが突然の来客だ

ドアをノックする音がした

少し早い気もするがレオンだろうか?


「レオン?申し訳ないがもう少し待ってくれます?」



「レオンじゃなくて悪かったなアナスタシア」


聞き覚えのある声だ初対面で失礼なことを言った気もするがここは振り返らず答えた



「どうかされましたか?レイス王子」


「お前に求婚しに来た」


何を言い出すかと思えば…成程


だが、私があの場にいたとは思ってもいない事だろう知らない存ぜぬの対応をする

「私の婚約者はユノ王子のはずですが?」

「話が変わったのだ。陛下は言ったアナスタシアを幸せにするものでは無ければいけないと」



「なるほど?陛下が…ですが貴方には野心丸出しで王の座を継ごうとしているように見えますわ」



「まぁそれは王を目指すと決めた以上。野心が出るのも致し方ないだろう?」



「私は支度の途中です。部屋を出てください」



「俺は次期国王候補だぞそんな態度をとっていいと思っているのか?」




「この場ではっきりと申し上げられたいですか?」


すっと立ち上がり振り返りざまに赤い目で睨まれ動けなくなっているレイスを横目に続けた


「陛下は言っていたはずだ。王を選ぶのは私自身だと」


そこまで言うとレイス王子は後ずさりそそくさと部屋を後にした


「大丈夫ですか?アナ様」


「これ以上面倒事はごめんだわ」



間違いなく王位継承争いに巻き込まれるだろうなと頭を抱える私だった




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