第3話 〜賃走〜特別運行

あぁクソっ、タバコ切れてんじゃねぇか


俺はのせさんが朝ごはんを作ってくれてる間にタバコを吸おうとしたが切らしていてイライラした


「ごめんなさい、いちろくさんお待たせしました」


のせさんが熱々のカレーうどんを持ってきてくれた


ありがとうございます、いただきます


これだよ、これ!

スープを1口、口に入れる


スパイスが効いてる味じゃなくて、ガキの頃お袋が作ってくれた豚の角煮の煮汁を使ったカレーうどん

少し甘くて、コクのある出汁の味がする優しい味


俺は先程のイライラも少し和らぎカレーうどんを無心で口にする



ドタドタドタ!


誰かが騒がしく階段を駆け下りてきた


「やばいやばい!遅刻だよー。今日試合なのにさぁ!!」


沙緒梨さんだった

ん?試合って? あぁ部活か!


沙緒梨さんは高校の先生で担当は社会

クラスの担任も持っていて、剣道部の顧問もしている 本人も段持ちとか


「ごめん!のせちゃん、朝ごはん食べる時間ないや!」


キッチンに立っているのせさんにそう言った


「ダメですよ沙緒梨さん、はいこれ」


小さめのトートバッグを、手渡す


「これって??」


沙緒梨さんが聞くと


「いつものカツサンドですよ!!」


のせさんがそう返す


「ごめんね!いつも!でも、電車だから食べれないなぁ。熱々が食べたかったけど仕方ないか。」


沙緒梨さんが受けとり、玄関に駆け出す


俺は立ち上がりのせさんに声をかける


のせさん、ごめん、これ

帰ってきてから食べるからちょっと置いといてくれない?


「え?いいですけど?何処へ?」


仕事みたいだからさ


俺が沙緒梨さんをみながらそう言うと


「わかりました!お気をつけて!」


うん。ありがとう。



上着と車の鍵をとり追いかける


沙緒梨さん!!


俺が声をかけると

動きを止めてこちらを見る


「ん?いちろくくんどした?」


乗ってって下さい


「え、カレーうどん食べてたじゃん、のびちゃうよ」


のせさんに預けてきました

俺、今日仕事ないんで!


俺がそう言い終わると


「じゃあ、甘えちゃおうかな?」


そう言いながら

ニコッと笑顔でこちらを見た


か、可愛い

い、いや、何考えてんだ俺は


後部座席に荷物を乗せ、助手席に沙緒梨さんが乗り込む



シートベルトを締めたのを確認してエンジンをかける


ブォォォォン!


いい音だ


昨日、車の中を綺麗にしておいて良かった


場所を聞き、ある程度道を調べて、発進する


「ごめんね、休みなのに、こんな事に付き合わせて」


いいんすよ、全然、どうせまた暇してたらおっさんに声かけられるし


「あぁ公園さん?」


あっこ連れていけーだのこっち連れていけだの

捕まると長いんすから


「アハハそれは困っちゃうね」


沙緒梨さんは、ノートを広げ今日の試合の事をメモしたり、カツサンドを食べながら話していた


俺は窓を開け、ポケットをまさぐる

タバコ、タバコ

あ、切らしてたんだ

それにダメだ客人が乗ってるし


「あー、タバコ?いいよ吸って」


ごそごそしてる俺を見てそう言ってくれた



いやー、今切らしてんすよね、それにお客さん乗ってる時は吸わないんで。


「そっか」


そこからはたわいもない話をしながら車を走らせた


意外と早く会場に到着した


「ありがとう!遅刻どころか30分前に着いちゃったね!」


良かったです


俺は先に降りて、後部座席から荷物を取りだし、助手席から降りた沙緒梨さんに渡す


「ごめんね!ほんとに助かった!ありがと!」


いえいえ、頑張ってきてくださいね!

じゃあまた家で!


〇〇高校剣道部と書かれた黒のジャージを羽織った沙緒梨さんが遠くなるまで見ていた


俺は車に戻り、助手席にふと目がいった


え、あ!忘れ物だ!


プリントが助手席に置いてあったが…そこには


朝ごはん邪魔してごめんね。

寒いから帰りにコーヒーでも飲んで帰ってください!ありがと!


そう書かれた紙に俺も沙緒梨さんもよく行くカフェのドリンクチケット5枚と500円が置いてあった


この500円は?

そう思い、先程のメッセージを見ると1番下に


PS 喫煙を促す訳では無いですが程々にしてくださいね


なるほど

気つかわしちまったなぁ


そう思いながらエンジンをかける


そういう所なんだよな、沙緒梨さんが大人な所は


コンコン


ぼーっとしていると助手席の窓を叩かれた


そこに居たのはよく見覚えのある顔だ

顔を真っ赤にしてる垂下だった


「いっくん、幻魔堂帰るでしょー乗せてー」

だいぶ飲んでいるのか、とても酒臭い


いやいや、昨日の夜から居ないと思ったら今まで呑んでたの?もう朝の九時だよ?


「ダチの家で呑んでたんだけど、仕事行っちゃって」


いや、そりゃそうだろ


「だからお願い!」


普段なら絶対乗せてやらない

助手席は絶対、だけど、今日はいいや



しゃあなしな!


俺はそう言いながら垂下を乗せて帰ることにした

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誰か聞いてやってくれ!!! 晴川 滝 @danderion39teppei

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