目覚め2

「やっと思い出してくれたかい?」


目尻には深い笑いシワが深く刻まれている。


「良雲さんなの?」


男は笑顔のまま頷いた。


「思い出したんだね。お嬢、自分の力で記憶を取り戻したね」


鶴子は泣きだした。

泣きだした鶴子を良雲は、右腕で抱きしめた。

あの時と変わらない大きな胸に抱かれた。


そうだ、良雲さんだ。この、、ぬくもり。


「そんな、私、ずっと良雲さんを忘れていたの?」

「俺が死んでしまったと思ったんだね」


鶴子は涙で言葉にならなかった。


「すまなかったね。俺も体が動くようになるのに時間がかかってしまってね」


良雲は少しだけ考える様な仕草をしたが続けた


「お嬢の記憶はお嬢が自分で封じた、

けれど、見える目と聞こえる耳は我々が封じた。」


清史郎が頷いてみせた。


「お嬢は自分で記憶と目と耳を取り戻したんだ。

また俺を見つけてくれて、ありがとな」


鶴子は、ずっと泣きながら良雲の話を聞いていた。しかし最後に黒い霧に包まれていく良雲の姿を思い浮かべながら、どうやって生還したのかだけが気になった。


「良雲さん、どうやって戻って来たの?」


「ああ、だってお嬢がお守りの石を投げてくれただろ?」


「うん」


「石って言うか、、、彼が助けてくれたんだ」


良雲は、ちょいと指さして見せた。

その方をみた鶴子はベッドから転げ落ちそうなほど驚いた。


「えっっ!!!?」


そこには蘭綾王が立っている。つい、口をパクパクさせている鶴子を見て清史郎と良雲は吹き出した。


「ぷっ、お嬢ぉ」


「あの、この人は・・・その、や、役者さん?」


「つ、鶴子」清史郎が慌てて諫めた。


「お嬢、お嬢の守り神ですよ。

上総之助様かずさのすけさまと言われる。ずっとお嬢と一緒にいらしたんだよ。」





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