Appers -アッパーズ

目覚め

鶴子の記憶の最後は遠のく良雲の姿だった。

一人、現世への橋を渡る時にポケットの中にあった「守りの石」を良雲に投げたところで目が覚めた。


目を開けると父の正輝がのぞき込んでいた。

「鶴子、鶴子」

「お父さん・・・、ここは?」

「病院だよ。」

「病院・・・」

「正月明けの初出勤で倒れたんだ。会社の皆さんが運んでくれたんだよ。」

「ああ、、、、えっと。」

倒れ込みながら現場監督の金城が大慌てで走って来る姿を思い出した。


「そうだ、金城さんのに・・・あっ!!」


鶴子は出勤途中だった事を思い出して飛び起きた。

起き上がってみると、もりや不動産の同僚達が居た。


「鶴ちゃーん」櫻田店長は泣きそうな顔をしている。

「ゴメンよ。鶴ちゃん、疲れが溜まってたんだね。」

「もう僕は倒れ込んだ島津さんを見た時、心臓が止まりそうでした」

金城は横田店長以上に涙目だった。

「金城君、鶴ちゃんをお姫様抱っこしてねぇ」

山鹿室長が金城を羽交い絞めしながら言った。

「わー、やめて下さい。山鹿室長」


「あの、あの、金城さん有難うございました。」

「ぶ、ぶぶぶ無事で、ほん本当に良かったです。それじゃあ僕はこれで」


金城は顔をポストの様に真っ赤にして山鹿を振りほどいて出て行ってしまった。


「あ、きんじょうさん???」


ドアが閉まるなり、残った同僚たちは爆笑した。


「うあーー、はっはっ」

「見ました ? 今の顔 ?」

「ポスト、ポスト あはははは」

「赤鬼だよ、わはははー」

「店長、笑いすぎ」


鶴子はぽかんと同僚の姿を見ていた所へ渕上が入って来た


「こらこら、病院で大騒ぎしちゃダメですよ。ご家族もいらっしゃいましたから皆さんは撤収して下さい。」


店長をはじめ同僚達は鶴子の父に丁寧に挨拶をし帰って行った。



そして入れ代りに母と祖父の清史郎が男を伴って入って来た。

鶴子は祖父の隣に居る男に釘付けになった。

白髪交じりのその男はニコっと微笑んだ。


「お嬢、久しぶり」



知っている・・・この声、この呼び方。







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