お別れ会2

「あった」

やっと亜美の家にたどり着いた。

辺りを見回してみても誰いないが、人の気配はする。どうやら近所で大人達が集まっているような気がした。ちょうど学習発表会の時のようにザワザワとした感じがする。鶴子は一人で外出したのは、この日が初めてだったせいで大人に見つかってはいけない気がした。


家に帰ったら、怒られるかも・・・。


いつも一緒にいてくれる母や神社のスタッフの顔が浮かんだ。


良雲さん、もう気づいたかな・・・探してるかな?

そんな事を考えた。


「つるこちゃん」急に声を掛けられた。

見ると亜美が自転車にまたがって、こちらを見ている。


「あみちゃーん」


片手に花を持って駆け寄った。

「つるちゃん、今日は一人なの?」

「うん」

「いつものお兄さんは?」良雲の事だとわかった

「今日は一人で来たんだよ」

「そうなんだ! すごいね~」

「これ、お土産」

道中で買った花を手渡した。

「ありがとう」




その頃・・・

鶴子の母、美和は葬祭場に向かうバスの中で考え事をしていた。

『鶴子はひどく傷つくだろうか・・・。それとも人の死を、まだ理解できないかな。』

新学期になる前に、今日の事を伝えなくてはならない。

思わず深いため息がこぼれた。同時に事故に遭った子供のことよりも我が子の事を考えている自分を恥じるような気持にも襲われた。窓の外は雪でも降り出しそうな厚い雲に覆われていた。


一方、鶴子の姿を見つけながらも呼び止められなかった良雲と清史郎は神社の本殿に入り結界を素早く張った。そして二人が同時に精神統一に入った。

全神経を鶴子の放つ霊圧を検索していた。

ほんの1分で鶴子の体が道路の上で置き去りにされている姿を確認した。

良雲の額から、じっとりと汗が流れる。すぐにも走り出したい気持ちを意識の深い所に押し込めて、いたって集中した状態を保った。

今、鶴子の体を確保に走るわけにはいかない。大切なのは、まずは鶴子の霊体の居場所を特定する事だ。


「いた」


良雲と清史郎が同時に見つけた。

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