お別れ会

鶴子は一人で街の中を歩いていた。

母と一緒に歩いたことのある景色だったが、母と歩いた時とは少し違う気もしていた。なぜか人の気配がないのだ。

しかし鶴子には、この機会に行きたいところがあった。

同じ小学校に通う予定の小川亜美ちゃんの家を目指していた。

一人で出歩く事は少なかったが母は、いろいろな所に連れて行ってくれた。

いま歩いている道も幼稚園に通う道の途中だし来月からは、この道を歩いて小学校に通うのだから道中にある亜美ちゃんの家にも行ける自信があった。


ただ不思議なのは音が聞こえない。

そして歩いていても、いつもなら感じる足の裏の感覚がない。

どこも痛くないし、寒くも暑くもない。


「おかしいな。・・・・不思議。」


いつも通る花屋の店頭には、いつもの様に色とりどりの花が並んでいる。

鶴子は白い小さな花を買おうと思った。

見ると店員はいないかわりに一束350円と書かれている箱が置かれていた。


ポケットが小銭を取り出して見ると350円入っていた。


「ここに入れます」と独り言を言い代金を支払った。


花屋から亜美の家はすぐだ。

鶴子は少しだけ良雲や母が自分を心配しているかもと思ったが、花を片手に急いで歩き始めた。





鶴子が亜美の家に急いでいる頃、鶴子の母はバスに乗っていた。

もちろん鶴子が一人で結界の外に出た事は知らない。

鶴子と同じ幼稚園に通っていた園児が交通事故に遭い不幸にも葬儀が行われる事となったのだ。

来月からは全員そろって小学校に通う予定だった。バスに乗っているのは皆が同じ年の子供がいるのだから一様に無口だった。

「もしも事故に遭ったのが我が子だったら」と頭をよぎる。そして胸を締め付けられるのだ。


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