見えてる? 見えてない?
レッスン
事務所に住み着いている白猫は普通の人には見えない猫だと言われた鶴子は仰天した。
「鶴子、これ何にみえる?」
清史郎はいつも棚の上にある置物を指さして言った。
「猿、猿の置物」
「清、何に見える?」
「僕には見えません」
鶴子に申し訳なさそうに清が言った。
「清おじさんには、見えないの!?」
「猿がいるんですか?」
「猿では無い。良く見ろ」
鶴子は、じっと見つめる。はっきり言って棚の上の置物を観察した事は一度もない。
少しバカバカしくなってきた。
人に見えない物が見えると突然言われても・・・、置物が見えてどうすんのよ。
「どんな猿に見えるんだ?」
鶴子は仕方なく置物を見た。
置物も、、、
「やだっ、おじいちゃん。置物もこっちを見てる。こわーい。」
「やだじゃない。あの赤子を助けたいと言ったくせに、ただワシにどーにかしてもらおうって腹だったのか!?」
怖いが、そんな風に言われるとカチンと来た。
「そんなんじゃないよ。」
今度は、じっと見つめた。
マグカップくらいの猿の置物は2個あった。
時々、置いていない時もあったけれどこの部屋にあったのは覚えている。
よく見ると・・・
大きな瞳はクリクリと動き、片手に灯篭を持ちフワフワと踊る様にそこにいる。
猿と言うよりも近年見かけるようになった沖縄のシーサーのコミカルタイプの様な顔をしている。獅子の様な顔に人の体をもった子鬼だ。1本のツノをもった子鬼は灯篭を持ち、2本のツノを持った子鬼はこん棒をもっている。
「お、おじいちゃん。子鬼よ。子鬼がいる」
「では、あれは?」と言いながら清史郎は窓を指さした。
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