#No.11
「島倉」の表札を前に、彼を待ち伏せしている。
小学生のころ、同じサッカースクールで出会っただけで、同じ学校に通うようになったのは高校生からだ。だから、幼馴染として親しくても、彼の家を訪ねるのは、せいぜい二、三回目だろうか。公式戦後のオフを利用して、先回りしている。
そこに、待ち人がやってくる。
彼は家の前に立つ制服姿を見つけた刹那、目を丸くした。それでもすぐに、ポーカーフェイスの調子を取り戻す。どうしてここに来たのかを問いたいのが本心であろうが、表情とともにそれを一旦引っ込めて、祝福の言葉を優先する。試合後、彼と話すのは初めてだった。
「リーグ戦初スタメン、おめでとう」
「ありがとう。五失点はいただけなかったけれどね」
昨日の試合、ついにトップチームで公式戦に出場した。公哉も求めに応じて観戦に来てくれたのに、結果は最悪。戦術上の必要で起用されたとはいえ、まだまだゴールキーパーとして未熟だった。ディフェンダーの責任にしきれないミスが目立ち、あれよという間に大量失点を許した。
とはいえ、彼も幼馴染が励まされに来たとは思っていないだろう。
「それはどうした?」
ここに来た理由ではなく、手にしているものに質問を投げかける。
その手には、サッカーボールを抱いていた。
「遊びに来たんだよ、久々に楽しいサッカーがしたくて。公哉も、部活は辞めてもサッカーをやめたわけではないんだから、いいだろ?」
これ見よがしに、彼は大きな嘆息を垂れた。
「そんな断れない誘い方、性格が悪い」
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