#No.7
球技大会の前日でも、トップチームの練習には関係がない。
きょうも六時限目の終了を知らせるチャイムとともに、いつも通り、荷物をまとめて練習へと向かう。
トップでの練習が続いているが、環境の変化はさほど感じられなかった。ユース出身のトップの選手もいるし、練習試合で顔を合わせることも多いから、心理的な障害はさほど大きくないのだ。
しばらく練習を続けて手ごたえを感じはじめた今週末は、リーグ戦の日程がない。休み節のまとまった時間を利用して、練習は戦術の見直しも含めたハードなものになった。おかげで頭の中はチームのことでいっぱいだ。
翌日に高校生活を彩るイベントが開催される実感がまるで湧かない。それ以上に特別な、リーグ戦デビューのほうが現実味を感じられるほどに。
練習に向かう足取りは、いつになく軽快だった。教室後方のドアを、鍛えたステップを活かして潜り抜ける。エナメルバッグは鳥の羽よりも軽い。飛び降りるように階段を下り、滑るように廊下を駆けた。下駄箱の蓋を開く前から、室内履きを脱いだ。
「涼香、一緒に帰らない?」
絶好調の下校時間、呼び止めてきたのは果音だった。
「珍しいね。いつもは、お互いひとりで帰っているのに」
彼女は特定の友人と必要以上に仲良くしようとしない。教室では人気者でも、放課後や休日に遊ぶ友人はいないのではないか。そのおかげで人気を保っている面もある。
「話したいことがあってさ」
大急ぎで靴を履き替えながら、重ねて珍しいことを言う。
「いいけど、ゆっくり話したりはしないよ?」
「うん。バスに乗ったら、少しだけ話そう」
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