#No.5

 日曜日はトレーニングマッチが組まれることが多い。

 前日の試合で出場しなかった選手や、出場時間の短かった選手を集めて、トップチームとユースが対戦する。お互いよく知った相手ではあるが、リーグのレベルの違いと、数年の経験の差が毎試合結果に表れるものだ。今週は、二失点で済んだのだから上出来だと思う。できれば、点を取ってもらいたかった。

「汐入、少しいいか」

 その試合後、クールダウンも終わらないうちに、コーチから呼び出された。

「週明けからトップの練習に参加してほしい」

 場所を変えて腰掛けたところで、トップチームのスケジュール表が手渡された。

 週末には、リーグ戦。

 トップチームでは、レギュラーのキーパーが故障により長期離脱を余儀なくされている。そのため、キーパーのやりくりが悩みの種だった。先月、ユース登録の自分がカップ戦でベンチ入りしたほどだ。

「いま試合に出られるキーパーは横一線だ」コーチの言葉が熱を帯びてくる。「ユースから呼ぶ以上バックアップの想定だが、汐入の実力を考えれば話は変わってくる」

 そして、とどめの一言。

「ベンチ入りはもちろん、戦術や相性次第ではスタメンの可能性だってゼロではない」

 想像していたより、ずっと早い。

 額を流れた汗を、睫毛が弾いた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る