第67回『泳ぐ』:雨の魚<オリジナル>

 滝のような豪雨の時は水と一緒に魚も落ちて傘がバタボトと音を立てる。小魚ならば大した被害にもならないが稀に一抱えもある大魚が混じっていると傘の中骨が折れたりする。大雨の中でそればかりは勘弁願いたい。大抵の魚は地面に落ちるとやがて溶けて消えてしまうが完全に水を冠した時はそこらでぴちゃぴちゃぴちゃぴちゃ泳ぎ始めることもある。気づくとズボンやら靴下やら濡れそぼって土にまみれているワケは奴らがあちらこちらで跳ねるからだ。蹴ってもすいと去ってしまうし掬い上げてもすぐ溶けてしまうわけでむかつくことも多いのだが雨が止み所々の水溜まりで溶けるでもなく還るでもなく閉じ込められつつ泳ぐ姿は案外かわいらしいとも思う。

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