第66回『橋』:橋はそこにあり続ける<オリジナル>
僅かな人間がようやく渡るだけだった谷間に立派な橋を架けたのは、谷の対岸のさらに先までも視野に入れた野心あふれる大国だった。
反対派は少数だった。迷信を謳う長老たちに権威に関わる呪術師たち。王族は外貨に目の色を変え、民はにわか景気に沸き立った。
頑丈で立派な橋だった。
トラックが列をなして渡っていった。多くの人が行き来した。豚が渡り牛が渡った。
やがて牛が発熱した。大量のよだれを流し始めた。豚が餌を食べなくなった。鼻水や咳が蔓延した。
呪術師は祈りを捧げ続けた。長老は熱病に倒れていた。
大国はただ道路を閉ざした。
民は病にあえぎ始め、政治家は対応に追われ続けた。
それでも橋はそこにあり。
此岸と彼岸を渡し続けた。
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