第62回『余り』:水槽の旅<科楽倶楽部(移民船世界観)>

 これは課題です。先生は水槽を運んできた。

「魚を飼います」

 水草を入れた。餌を買った。掃除も当番制にした。

 魚は順調に育っている。


 これは課題です。先生は大きな水槽を指した。

「掃除の回数を減らします」

 餌の量を調節した。濾過装置をつけてみた。日に当てる時間も考えた。

 魚は順調に育っている。


 これは課題です。先生は餌を指し示す。

「餌をあげずに済ますには?」

 プランクトンは? 昆虫は?

 魚は死んだ。また用意した。僕らは試行錯誤を繰り返す。


 これは業務です。上司はモニターの前に立つ。

「余剰も余分もありません」

 太陽光は既にない。掃除も食事も酸素も全て『水槽』の中で完結させる。

「もしもの余裕も考えて」


『水槽』はまだ、旅半ば。

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