第61回『包む』:僕の宇宙を包む〈オリジナル〉

「包むとはものを一つにすることを言う」

 はいと元気な声が上がる。

「贈り物は綺麗に包みます!」

 うむ。博士は大仰に頷いた。

「贈り物は、もので心だ。かたちあるもの、かたちなきもの。包むことで一つになる」

 幾人かが首を傾げた。僕は博士の言葉を待つ。

「心は何かに包まれて、その何かを確かにする。例えばもの。例えば肉体。肉体は大気に包まれ大気を大気たらしめる。包むものは包まれるもの」

 博士は続ける。大気は地磁気に。地磁気は太陽風に。太陽風は銀河風に。銀河風は宇宙に。

 宇宙は。


 ざわめきが広がっていく。


 *


 博士の包みが笑顔のまま炎の中で解けていく。かたちなきものが放たれる。


 ――心に包まれておる。


 僕の宇宙が、包まれていく。

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