第61回『包む』:プロペラが回りだす〈科楽倶楽部(移民船世界観)〉
小さなプロペラが揺れている。色葉の影で幾つも、幾つも。
ごつん、頭に。
「サボってんじゃない」
「線だけじゃん!」
当たったのは端末の角。
紅葉という植物の映像資料の裏には二本ののたくる線グラフ。上の線は微動を続け、下の線はほぼ一本。見た目変わらず離れたままで横軸だけが増えていく。
「緊張感ってもんは習わんのか」
人類が太陽系を初めて出る。太陽風に包まれ守られていた船が、銀河を渡る風を知る――そう聞いてはいたけど。
この船で生まれ、言われるままに航路観測の専科に進み、研修は線を睨むだけ。
「何を緊張するの」
白いひげがむにりと動く。
「さてな」
ビィィィィ!
音と共に線がわずかに動き出し。
プロペラが風とともに回りだす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます