第59回『窓』:同窓会

 社会の窓が開いていた。

開窓社ひらきまどもり?」

「一発っしょ?」

 笑顔が記憶と重なった。かつても今も、誠実な。

「連絡感謝。普通の同窓会では無理だった」

 頭を下げる。艶のある髪が肩口を滑っていく。

「名前は?」

 微笑み。思案し。

「秘密の窓だね。では盲点の窓を教えてくれる?」

「播磨か。美女に見えるぞ」

「それは開放の窓だと思うよ」

 ジョハリの窓。名前に掛けてあの頃の会話の定番だった。

「アバターはリアルにって」

「書いたけどね?」

 人外、魔物、無機物にアイコン。人間なんていやしない。

「窓越しだからな」

 肩を竦めて見せる開は今、四肢麻痺だと聞いていた。

「窓越しだね」

 奇人の揃った男子校。仮想空間での同窓会も悪くない。


※ルビ込で300字

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る