第58回『夢』:夢の玩具<タブレットマギウス>

 渾身の塗装が陽光を跳ね返す。手の内の操作に合わせてローターが呻りを上げ始める。一つが高らかに宙に浮く。負けるな続けと二つ三つと青空へ、通信が届くその際までカメラを抱えて飛んでいく。

 飛ぶことはできなくとも。飛ぶかの如くの鳥の視界を切磋琢磨の仲間たちと。


 夢の玩具が廃れて消えて。

 仲間は一人消え一人去り。いつしか周囲に気配もなく。


 *


 軽装の若造はふらり訪れタブレットをただ叩く。生まれた光は鳥を象り優雅に空へ飛んでいく。

 塗料の臭いをさせることなく、油に手を汚すことなく。


 俺は負けじとスイッチを入れる。


 タブレットにはじじいと若造が映っている。

 モニタにはじじいと若造が映っている。

 笑い合う。


 *


 夢の玩具は物でなく。

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