ビーチボーイ


「稲刈りに出掛けたままビーチでフルチンで発見されたのがあなたの夫ですね?」

「ええ………」

あなたは陰鬱そうにそう答えた

指さした

「あそこのフルチンが旦那です………今、ビーチセイバーに殴られています」

「なるほど実に興味深い」

おれは頷いた

遠くで揺れる上半身

近寄ってみれば血飛沫などが飛び交っているのかもしれない

おれの名前はスグル

類い稀な性欲の持ち主としてこの時代をお騒がせしているAV男優だ

今日は浜辺に繰り出し早速ぴっちぴちの若奥様に声を掛けさせてもらっている

「奥さん!」

奥さんはこちらを見た

「なんでしょうか?」

「………プリンでも一緒に食べませんか?」

「はあ」

奥さんを口説くつもりだったが自分の意気地の無さを呪った

これでも令和に突如として現れた類い稀な性欲の持ち主であるAV界の貴公子スグルなのか? と思わず自問自答した

「プリンですかあ」

奥さんは不思議そうな顔をしていた

言った

「ええ、奥さんのその巨大なおっぱいプリンちゃんを是非とも御賞味させてくださいよ」

家庭に閉じ込められた奥さんの中に秘められているメスの欲情を刺激するのだ

おれはいつもこんなことを思っている

女という生き物はオスの汗臭い匂いや強姦まがいの熱烈な求愛を常に求めている存在なのだと

血走った目で土下座し迫った

砂浜からゆっくりと顔を上げる

ドキドキの瞬間である

だがそこに奥さんの姿は無く通りすがりの人がくすくすと笑っているだけだった

「ばーか」

誰かが心無い言葉を浴びせかけた

おれの中で絶望の交響曲が鳴り響こうとした

奥さんが小走りでこっちへ戻って来た

「すいません………旦那が気になっちゃって助けに行ってました、話しの途中でしたがプリンがなんでしたっけ?」

おれは言った

「いえ………もういいんです、何もかもが済んだことですから」

頭の中は早くも次のミッションへと切り替わっている

類い稀な性欲の持ち主であるAV界の貴公子スグルの下半身のレーダーはまだそこら中にお目当ての対象物がいることをビンビンにおれに伝えてくれているのだった


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