第5話 淡い恋心とおっさんと不感症
恋や愛と性欲は別なのでは、と仕様のないことを考えながら、浴槽の中で最近めっきり悟りを開いているらしい我が分身を眺めた。眺めたところで復活する兆しなどないので、ズルズルと浴槽に寄りかかる。
「……やっぱ歳?」
ああいやだ。なんの経験もないまま、終わりを遂げるなんて。すまん息子よ。せめて風俗にでも行けばよかったな。お前が知ってるのはTEN●Aと右手くらいか。あ、だめ、泣ける。
「仕方ないよなぁ……」
ぼんやりする頭に浮かぶのは現在部下で歳の離れた同性。報われないねぇ、と呟きながら、苦笑が浮かぶ。
昔からそう。好きになる相手が同性で、無意識のうちにこれはおかしな事なんだろうと、友人間で話される恋バナもそれとなく自分から逸していた。まぁそれでもしつこいことはあるわけなので、適当に有名所を上げて「花屋はメンクイ」のレッテルを貼られるようになるのだが。
今朝掴まれた手首の感触を思い出す。強くもなく弱くもない、促す仕草。真新しい眼鏡の横顔。整った顔してるなぁと思い出す。手首を掴む手も大きかった。身長差でこうも違うのかとと感心しつつスーツ越しの熱と感触を憶えておきたいと思った。会社に着くと早速取り巻きの女の子達に引き離されたわけだが、そんな俺を申し訳無さそうに眉を寄せた顔。気にしなくていいと笑ってみせるのがやっとだ。一緒にいるだけでドキドキするなんて、この歳でなかなかない。そんな気持ちをくれる彼は貴重であり有り難い存在なんだろう。それ以上を望むことはおかしい事だろうと、あまり見れない不機嫌そうな彼を思い出した。
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