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差し出せされたものを受け取るしかない立場であることは重々承知している。
そもそも、それを与えてくれる者が居る、という事だけでも奇跡的な話だ。
相手は自分の正体を知っている可能性もあった。
それでも、一生得られぬと思っていた一時を味わうことができる誘惑は断ちがたく、誘われるままに関係を持ち続けた。
いや、いつの間にか自分から求めていた。
それは、想像していたような、甘美なだけのものではなかった。
自分ですら知らなかった器官の中に他者に侵入を許すのは初めとても理不尽なことに感じられた。
合意の上の理不尽な蹂躙。
なのに、身を委ねるという感覚に開放を感じた。
矛盾だらけだ、なにもかもむじゅんしている
それでも慣れてくれば躰の、肉の、肌の、粘膜に与えられた刺激は狂おしく、息苦しく、切なかった。
そしてその果てにやってくるあっけない虚脱感。
抜け落ちた自分にゆるゆると戻っていく気怠さ。
それだけでも十分だと思っていたのに。
それなのに、味わえば味わうほど、その滋味を知るほど慾は深くなる。
忌まわしいほど深くなる。
無視できないほどに偽りの躰にしつこく纏わりつく。
ああ、これは私の為に掘られたあからさまな墓穴だ。
それなのに、もっと、もっと違う味わいを、知りたかった。
だが、それを望むのは、
それを望んでいると相手に知られるのは危険だった。
だから、一切表には出さなかった。
でも、今夜はいつもと違う。
それで、まるっきり身も心も奪われた。
とんでもないことだ。
ああ、これはわたしのためのあからさまな・・・。
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