第62話 気功の先生

 平成二十五年三月、気功の先生に会って、妻のような人間が治せるのか尋ねた。

 裁判のことや娘のこと、妻の精神状態や日頃の言動を話して、こういう脳の障害は気功で治るものかどうか。

 ただ一言。

「生まれ持ったものと寿命は変えられません。」

 あぁ、やっぱりそうか…。不思議と納得できた。


 帰宅して、お礼のメールをしたら、先生から返信が届いた。

「遠いところ、お疲れさまでした。

 人生、まさかと言う坂を越えて行かないとならないと言います。

 辛いでしょうが頑張ってください。

 貴方の生涯の伴侶は別に居ます。

 何時か、目の前に現れますよ。

 それまで、目指すものを勉強して成功を目指して頑張りましょう。」


 新しい人生に目を向けて進んでいこうと気持ちを新たにしたが、まずは娘を守るために最後まで必死に家庭裁判所と戦い続けると決めた。

「父として娘を大切に守り育てます」

 初めて出雲大社にお参りした日、絵馬に書いて心に誓ったから。


 変な話だと思う。普通、裁判は相手方と戦うものなのに、家庭裁判所に対して徹底抗戦を決めたのだから。

 同年四月、間接強制の審尋で家裁に行った帰り、弁護士さんに尋ねた。

「裁判官の心証、悪くしますかね」

「仕方ありません。裁判官がこちらの言うことをまったく聞かないのですから」

 弁護士さんが苦笑した。


 出雲大社でいただいたおみくじには、こう書かれていた。

「誠心をつくして神に祈りを深めて依頼し、自己の過信の力に依頼するなかれ。

 すべて、ひたすらに祈りを顕わすべし。

 さすれば、神は進む道を直くしたまう。」

 謙虚に進んでいこうと思う。

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