第60話 しあわせになれるかな

 娘とお風呂に入って、体を洗ってあげていた時のこと。

 あまりに一方的で偏った理不尽な家事審判に、ウンザリしていた私がつぶやいた一言。

「しあわせになれるかな」


 それに答えて、娘が大きな声で、

「なるー! なれるよ!

 おとうさんとメイちゃんとじいちゃんとばあちゃんで、

 ぜったいしあわせになるー!」


 そこにすでに母親が入っていなかったことに苦笑しながら、

「そうか。そうやな。みんなで、しあわせになろう。

 がんばろう!」


 しあわせになることを約束した娘は、

 今、私のそばにいない。

 けれど、こうやって離れていることも、

 しあわせになる日のための一過程と信じている。


「しあわせになろう」

 あの日、娘と約束したから。

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