第13話 適合者?

 店舗から一番近いベンチに腰掛けると早速アルテミスを呼び出す。


(さっきの話の続きなんだけど)

(「ポロ」の件ですね。惑星を管轄している通称『星系AI』には、その惑星のみならず星系内の全ての「情報」が集まる仕組みになっています。そして集められた情報は全て検閲・選別され、更に上位にあたるAIに定期的に送られています。この行為はある程度の身分の物なら誰でも知っています)

(サラも?)

(はい。一部の例外を除き情報収集はどこの施設や惑星でも至る所で行われており、それ専門の部署が取り扱っています)

(情報を扱う……情報部?)

(正解です。彼らは全宇宙から集められた情報を精査した上で、それぞれが必要としている箇所に適切にフィードバックさせ、物事が円滑に運べるようにと日々協力してくれています)

(へーーならこの「ポロ」もそのお陰?)

(正解、と言いたいところですがドリーを取り巻く環境は特殊で、他の星系とはだいぶ事情が異なっています。なので「ポロ」に関しては正解でもあり不正解でもあると)

(……事情?)

(それで納得して下さい。その内、全てを知る時が来るでしょう)

(……分かった)

(そして情報部に集まった「探している条件に合致した情報」は、最終的に我々探索部や情報部といった『政府特殊機関』を束ねている『総本部』へと送られいます)


 総本部……確かあの『月』にあるんじゃなかったっけ?


(これらの「情報収集システム」は、全ては「あの方」に辿り着くためのシステム。因みに貴方達探索者はシステムの根幹を担っています)

(根幹? 探索活動のことよね?)

(はい。具体的には遺跡探しが、ですね)


(私達探索者は「遺跡」を発見するのが目的…………そもそも「遺跡」って何なの?)


 今更ながら上から具体的に『遺跡』が何なのかを知らされていない。我々の任務は合否判定を行うまでで、発見した場合は上司サラに報告し撤収しろとだけ伝えられていた。



(『遺跡』とは『あの方』へ辿の『道標(みちしるべ)』)



(……「あの方」って誰?)

(「あの」の詳細はレベル5でないと明かせません)


 れ、レベル5? 4の上がまだある?


(……なら「あの方」と今回の「消失」との関係は?)

(今から二百年程前に現在と同じ「消失現象」が発生。その現象を自らを「贄(にえ)」にして沈静化に唯一成功された方です)


 そんな昔にもあったんだ……って贄⁈ それと、


(現象ってことは自然に発生している?)

(……今までは)

(今まで? 今回は?)

(…………)


ダンマリかい。


(アルテミスはその件を知ってたの?)

(いいえ。前回のエマが「条件」を満たしていたので、第一目標に向かう最中に私の中に封印されていた最優先プログラムが発動。それまで作動していたAIとの「融合」がなされました。その時点で私の役割が変わりました)

(どう変わったの?)

(現れた「適合者」を「あの方」の下へ導くこと)

(適合者って……わ、私?)

(はい。今現在、エマが「最有力候補」です)



 〈おめでとう お前は〉 by サラ



 ……選ばれた? でも今「満たした」って言ってなかった?


(……適合者になる条件は?)

(探索者であり、さらに「あの方」に気に入られること)


 ? 抽象的過ぎて訳わからん。あの方っていうのは『桜』だと思うけど。


(……このことをサラは?)

(ご存知かと)

(贄とは?)

(言葉通りです。「世界を救う者」であり、最終的にはこの世界から消滅します)



 ──消滅。



(……今の話はレベル4以上でないと知り得ないのよね?)

(はい)

(てことは無知をいいことに選ばれた後も私はいいように使われるってわけ?)

(それは違います。この件は何もエマだけ、という訳ではありません。エマも辿ように……)


 何か言い訳染みた事を言い始める。だがそれどころではなくなった。というのもなんだか無性に腹が立ってきた。

つまりは探索者は「あの方」に会うためだけに存在していると?

 そして会ったら会ったで最後は消えろと?


(そう……ローナはこの件を知っている?)

(知りえない立場の筈ですが、薄々は勘付いているようです)



 ──あの発言は……



 流石はローナ。あの言葉はこの件を意図しての事だろう。

 今の話ではローナは「探索者」であり、基地や我々をめちゃくちゃにした「側」にはいないと確信した。

 そしてこの一連の騒動は何者かによって仕組まれていたとも。


 何故かローナのドヤ顔が思い浮かぶ……ぷっ。


「プ、フ、ハハハハハ」


 自然と笑いが込み上げお腹を抱えて笑ってしまう。


(ど、どうかされました?)


 アルがビックリした口調で聞いてきた。


「いやいや〜何でもない」


 目から笑い涙が溢れる。こんな状況でも信じられる者が一人でもいると分かる無性に笑いが込み上げてきた。


「で、これから私は何をすれば良いのかな? アルテミスちゃん?」


 笑いが残った口調でアルに明るく問い掛けた。

 自分でもはっきり認識出来るくらいに開き直れた感じだ。以前の私では考えられない気分。


(今は基地の再建と仲間の捜索を優先して下さい)

「分かったわよ〜だ」

(時期を見てまたお話しします)

(はいよ。その時に「消失」について詳しく教えてくれ)

(答えられる範囲であれば)


 笑って目を開けた時に視界の片隅に人影が見えたので会話を切り上げた。


「お待たせしました♡」


 ランとマキが並んで近くまで来ていた。

 ランは両手、マキは片手に小さな紙袋を下げながら。

 笑顔の二人が数m手前まで来たところで、ベンチの後ろから現れたノアに抱きかれる。


「……何、話してたんだ、ぞ?」


 私の後頭部に胸を押し付け、頭上からチラチラと私の顔を覗き込んでくる。


「そや。そんなニコニコ顔で〜エ○い話か?」


 マキがニヤケ顔で弄ってくる。その言葉にノアがピクリと反応、一瞬でベンチを乗り越え私の膝の上に跨って座った。


 ち、ちょっと顔、近いってば!


「違う違う! アルと今後を詰めてたんよ! ね、アル?」

「…………」

「何でそこで黙るかなーー‼︎」

「……怪しいわ~そんでどんな話や?」

「うふふ。ちょっとあちらでお聴きしましょうか♡」

「……れっつ、れんこ〜〜」


 マキとランに両手を引っ張られ、ノアは私の顔に胸を押し当て抱っこ状態でしがみつく。

 両手両足は頭と体にしっかりホールドされながら。


「何で私ばっかり〜〜」


 引きずられながらスパへと連行されていった。


 スパへは一分くらいで着いた……がノアが邪魔で前が見づらい。

 先行する二人が入口に入るとすぐに、理由は分からないが私を引っ張っていた手が離された。

 丁度良いと空いた両手でノアを優しく引き剥がしにかかる、が抱き付く力がさらに強まり息苦しさが増してしまう。


「ノア、そろそろ離れなさい」

「……いやだぞっと」


 お、抵抗するか。それなら……


 こちょこちょこちょこちょこちょこちょつんつんつんつん。


「ひゃ、ひゃ〜ぁァァァァァァ」


 よし、今だ〜…………ってこれでも離れない! なんて力だ!


「……も、もう、も〜一回♡」


 おいおいダメだ、こりゃ。

 諦めてそのまま抱えて入店しましたとさ。


 見えにくいまま入店すると、しがみついていたノアが何故だかスルリと降りてくれた。

 前を歩いていた二人も立ち止まって動かない。

 声を掛けようとして周りの「景色」が目に入る。

 確か「スパ」という施設に来た筈だが……私達は何故だか南国の浜辺にいた。


 浜辺で夕陽が沈む海を見ながら、四人は場違いな宇宙服姿でポカーンと口を開けて並んで立ち尽くす。


 目の前には砂浜が。

 傍には大きなウッドデッキがあり、海側から見て右側に大きな長方形のウッドテーブルとアームレスト付きのウッドチェアが四脚。

 中央には四人が横並びで寝ながら夕陽が見られるほど広いバブルバス。

 左側には四人分のハンモックが置いてあった。


 ここには真っ白なタキシードを着た二人の女性アンドロイド給仕がこちらを見て背筋を伸ばして待っており、背後にある「自動ドア」だけがここが基地の中である事を教えてくれていた。


 未だに動かない三人に「行こ」と順番に背中を叩き再起動を促す。

 すると叩かれた順番に我に返り目をパチクリさせ辺りを確認し始める。


 自分はこういう演出には慣れていた、というより自艦内で入浴する時には必ずといっていい程、自ら演出していたからだ。

 要は背景という名の映像。ここをプロデュースしたのはあのアルテミス。なのでエマの好みを知り尽くしている。


(流石ですね)


 アルテミスに褒められた。


(まだまだね、八十点)


 甘やかすのは良くない。もっと精進して貰わないと。


(でも他の方は喜んでくれていますよ)


 三人を見ると水際に移動していた。


「あ、危ない! その先は壁……」


 と言いかけたが、三人の足元には実際に波が押し寄せているようだった。


「え? どういうこと?」


 考えてみれば自分の足元の砂も本物の感触。


(波際から三十m先までは実際の「海」です。当然泳ぐことも可能です。勿論砂も本物。流石に波は人工的に起こしていますが)

(はあ?)


 建物二件分相当のスペースをよく確保できたな。


(ここの砂と海水は「ドリー」にあるエマの自宅前のものです。以前候補地選定の時に採取しておいたものです)

(あんたね〜基地の修理は色々と大丈夫なの?)

(はい問題ありません)


「はぁ〜全く……。まぁみんな喜んでいるからいいか」


 半ば呆れた。こんな奴に基地の再建を任せて大丈夫かいな。


「エマっちも早よ」


 とマキが目を輝かせ手招きをしていた。


「そこ泳げるって!」


 作り笑顔で教えてあげた。


「マジかいな!」「ホント⁈」「……嘘ではなさそうだ、ぞっと」


 顔を見合わせてから自分の足元の海水を見て感触を確かめている。

 そんな三人に軽く手を振ってからウッドデッキへ向かい、そのまま一番手前の椅子に腰を落とす。


「ふ〜。冷たいキーマン茶を。氷も何もいれないでね」


 座ると同時に近づいてきた給仕に顔だけを向け、軽い笑顔にて注文を入れた。


「かしこまりました」


 クルッと向きを変え下がって行く、と同時にもう一人の給仕が木製トレイに、汗をかいているガラス製のグラスを運んできた。


「お待たせいたしました」


 音もなくエマの前にコルクのコースターとグラスを置く。


「ありがと♪」


 礼を言ってからグラスに手を伸ばし一口飲む。


「う……何これ」


 眉を寄せグラスを睨む。


「すごく美味しい……もしかして本物?」


 紅茶から目線が離せない。香りも別次元。持つ手が小刻みに震え出す。


「はい。特級茶葉を使用しています」

「マジ? 嘘でしょ⁇」

「本物です」


 品のある笑顔で頭を下げそのまま定位置へと下がっていく。


 本物……ならこの「一杯だけ」で高級住宅地にプール付きの家が買える値段の筈だ。



 茶葉の品質ランクとして特級が地球の本場産、一級が本場産と同じ気候・土壌・水源で作られた茶葉、二級が本場以外の地球産、三級はそれ以外となっており、更に一〜三級にはA〜Cのランクに細分化されていた。


 因みに「人」が生育に直接関わっていない場合は問答無用で三級となってしまう。


 余談だが茶葉の品質評価は、この世界に残っている二家の王族の一つである「ロイヤルファミリー家」が代々行っている。


 エマが普段飲んでいるのは一級のCランクで、姉妹の誕生日や特別な時だけ一級のAランクをチビチビと飲んでいる。


 最近で言えばあの草原惑星に降りた時。

 これでも庶民にとっては一箱数年分の年俸をつぎ込まないと手に入れられない代物だが、エマはキラキラ石の副業でそこそこ儲けているので何とか入手出来ていた。

 その見たことも嗅いだことも無い、幻の超・超高級紅茶が目の前に存在している。



 一口飲んでしまった! 何てこった! 遅いかもしれないがもう一度。


 先ずは香りから…………はっ⁈

 意識が飛んでしまった!

 もう一度…………はっ⁈ まただ!


「何遊んどるの?」


 傍で三人がジト目でこちらを見ている。


「はっ⁉︎」


 ビクッとして大事な紅茶を少しこぼしてしまった‼︎


「ああああぁぁ‼︎ なんてことをーー!」


 本気で泣き出したエマにオロオロして戸惑うマキ達。

 ランも理由が分からずエマとマキを交互に見遣る。

 ノアは……既にエマの後ろに回り込んでいた。


「……どしたの? エマ?」

「あ、あ、うぅぅ」


 ティーカップを両手で握りしめ、大粒の涙を流して項垂れている。

 ノアの問い掛けに答えようとするが言葉にならない。


 そんなエマを見てノアは鼻でため息をついてから、娘をあやすように囁いた。


「……そんなにこの紅茶が飲みたかったの?」


 慈愛に満ちた声。

 初めて聞いたその声に二人が「あんた誰?」との表情で驚く。


「うぅぅ……うん」

「……ならもっと飲めばいい」

「……え?」

「……かも〜ん」


 ノアの合図で笑顔の給仕が紅茶を継ぎ足してくれた。


「……さあ、いっぱいあるから好きなだけ飲みなさい」


「あ、あ、あうん。あ……ありがと、う」


 泣き止んだエマの頭をポンポンと優しく撫でた。

 体格差から歳が離れた妹が姉をあやしている微笑ましい光景。


「……どういたしまして、だぞ」


 その光景をただ口を開けて眺めているマキ。

 ランは「あのポジションは私が……」とか言いながらノアを悔しそうに見ていた。




(エマにこんな弱点があったとは)


 テーブルに一番近いバブルバスで、泡から首だけ出して空を見上げながらマキが呟く。

 エマに聞かれない様、マキランノアは脳内通話で会話している。


 結局、エマは食事が終わるまで一言も喋らなかった。

「特級キーマン茶」から目を離さず、食事も取らず、誰とも目を合わせなかった。


 食事を終えた後もフラフラ〜とハンモックまで行き、皆に背を向け一人静かに横になっていた。


(弱点というよりも感傷的というか、いくら紅茶が溢れたからって泣くのは……疲れているのでしょうか?)


 マキの隣で、泡から出している首をエマに心配そうな眼差しを向ける。


(……エマは今、色んな事を背負ってるんだ、ぞ。話せない事だってあるだろう、に。私達の面倒だってみてるんだ、ぞ。サラ達のことも心配だ、ぞ。ちょっとした、キッカケで「壊れてしまう」かもしれない、ぞ)


 エマから一番離れたバブルバスに入っているノア。うつ伏せになり頭と両手を縁から出して、ついでにお尻も泡から出しながら。


「「……」」


 確かにそうなのかもしれないと思い二人は何も言い返せない。


(……エリーがいないのが……一番……辛いの、かも)


 マキとランは黙って聞く。


(……昔、エリーから聞いた、ぞ。あの二人の両親は生まれ直ぐに事故で亡くなった、と。その後は政府が姉妹を引き取ってくれて、何一つ不自由なく育ててくれた、と。二人の普段の様子から多分だけどエリーは母親代わりだったんだ、な)


((…………))


(……詳しくは知らないけど、学校も政府の施設で卒業したら直ぐ二人でここに来た、らしい。だからここまで二人はずっと一緒だったんだ、な)


(……自分の紅茶が溢れ手元から消えた。多分、エリーと重なったんだ、ぞ)


(……だから、今は……そっとしといて、あげよ、っと)


 こんな状況だからこそ分かるモノもある。それを改めて知ったマキとラン。


(……私が……もっともっと頑張らなければ……)


 ランが自分に言い聞かせる様に空を見ながら力強く呟く。


(せやな。ウチも頑張ろ)

(いや、マキさんはそのままで)

(……何でや)

(……お笑い要員がいなくなるぞ、っと)

(おい!)


「あ〜お腹空いた〜」


 その声に瞬時にノアが反応して振り向くと、エマがハンモックから起き上がり背伸びをしていた。


「……エマ?」

「……な〜に?」

「……先にこっち、だぞ」


 空いているバブルバスに目を落とし入る様に促す。


「そうね!」

「……ふへ?」「「!」」


 ノアの誘いに躊躇いなく宇宙服を脱ぎ捨てると空いているバス……ではなくノアが入っているバスに勢いよくダイブする。


「ぷはーーーーいや〜気持ちいいね〜」


 ノアの脇から顔を出し至福顔をして見せる。

 眉間に皺を寄せたノアは変な声を出し、ランとマキは突然の行動に呆気に取られる。


「……ちょっと狭い、ぞ」


 と言いながらも横にズレる。


「えへへ」


 文句に対し照れ笑いを返してから頭まで泡に潜る。

 直ぐに「ぷはー」と顔を出し、両手で顔と髪の毛の泡を取り除く。

 それを見ていたランが「私もーーー」と叫びながらダイブしてきた。

 直後、泡の量が増え始める。


「キャーー」


 誰の声だか分からないが叫び声が泡から聞こえてくる。


「いや〜〜〜どこさわってるの⁈」多分エマ。

「……まだまだ〜」多分ノア。

「良いではないか〜」多分ラン。


 山盛りになった泡のせいで内部の状況が掴めない。

 訳の分からない状況にマキは加わるべきか悩む。


 いや、ここは敢えて見て見ぬ振りしとこ。

 というわけで仰向けで目を瞑る。


 今日も色々あったな〜

 ウチも頑張ったな〜


 てなことを考えてると脇から邪悪な気配が……


「一人だけ除け者はマズイよね?」


 見ると全身泡まみれで髪の毛をワカメにした三人が見下ろしているではないか。


 三人とも恥じらいっちゅー言葉知らんの? 少しは前隠しぃー大事なとこ丸見えやんけ、とドン引きしながらそれぞれの顔を見ると……


 エマの目がおかしい……

 ノアの目がおかしい……

 ランの目がおかしい……


 何や変なスイッチが入っとらん?

 な? 一回落ち着こか?

 そのにぎにぎした手は何や?

 何でウチに寄って来る?


「それ! 皆の者かかれ〜!」

「いややーーーー」


 三人がダイブ、四人とも泡の中へと消えていった。



「ふぇ〜〜もうお嫁に行かれへん〜〜」

「ちょと擽られたくらいで泣くんじゃない!」

「……そうだぞ。エマを堪能した後だったからそのくらいで勘弁してやったんだ、ぞ」

「ウフフ、マキさん意外とウブなんですね♡」

「ううう……」


 今度はマキが泣く。

 その隣ではフルーツパフェを食べているラン。対面にはクリーム白玉あんみつに抹茶ソースを掛け美味しそうに頬張るノア。その隣のエマはローストビーフと野菜生サラダとクロワッサンを食べながら席に座ろうとしないマキを弄っていた。


「……マキだって、どさくさ紛れに私を触っていた、ぞ?」


 デザートに目が釘付けのノア。


「あ、アレな、引き離そうとして、な」

「まあまあ、分かった分かった。いいから食べよ?」


 まだ手を付けていないマキが頼んだバニラアイスを食べるように勧める。


「くぅぅぅ〜〜」


 悔しそうに目を伏せる。そして観念したのか椅子に座り、スプーンに手を伸ばして食べ始めた。


「でもエマさんの素敵な「お身体」を堪能出来たのは、私にとって至福の時でした♡」


 ランが両手を握りしめ祈り出す、と同時にランの周りに色とりどりの花が咲き始める。

 この花はランの艦AIの仕業。


「……私もだ、ぞ〜」


 周りに花を咲かせながらノアも同じ仕草をし出す。この花はノアの艦AIだ。


「はぁ〜」


 全くどいつもこいつも……


 でも……みんなありがとね、と心の中で感謝をしてからローストビーフを口に入れた。


「うん、美味しい!」


 だいぶ元気が戻ってきたぞ!

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