第2話 報告会?


 急いで、とは言っても跳躍を開始したら後は天に祈るだけ。

 瞬きしている間に何十・何百光年と移動できる「跳躍」だが速度の上限は定められており、その決まりを破ろうものなら後に速度スピード違反で罰せられてしまう。


 見つからなければいいんじゃない?


 その考えは悪手。ウチの『上司エリアマスター』はこの手に関して感が鋭く大抵はバレる。



 ◇


 ここで『探索部』の説明を少々。

 ここで名が出た『エリアマスター』とは通称名で、正式には『探索部主任』という。

 その主任が所属しているのが『探索部』なので探索部の説明から。


 探索部とは国の組織の一つで、一般市民には内緒な超極秘部門の扱い。

 同様な極秘はエマが知っているだけでも二部門存在しているが、其方は今は割愛。

 その探索部を運営しているのは政府、と言うか国。なので主任やエマ達は立派な公務員。決して怪しい団体でないと断っておく。


 でその探索部の任務は『遺跡』とを探し出すのを目的としており、怪しい領域に直接出向いて調べる者を『探索者』と呼び、その指揮を執っている者が『主任』である。


 彼ら彼女ら主任の立場は担当現場エリア最高権力者トップであり、現在は男性二名、女性二名の計四名が各エリア(A.B.C.D)に一人ずつ配置されている。


 因みにBエリアの主任の名は『サラ』と言い、女性で背も高く、ないすばでぃな超絶美人とよろしい。だが中身はパワハラ大好きな堅物そのもの。


 と逸れる前に話を戻すが主任の権限は絶大で、立場的には『主任』の上である地方行政府に対しても「要請」という名の命令が出せる程の権力が与えられている。

 また部内でもにはなるが、探索部関連施設の統括責任者でもあるため、管理下に入っている探索任務専用の艦である『』に対しても、艦を操る専任搭乗者である『探索者』よりも上位の権限を有している。


 さらに艦に限らず「管理下にある全てのAI」は主任の命令には従順で、仮に探索者エマが探索艦アルテミスコイツに「黙ってて」と命令口止めし記録まで改竄させたとしても、主任サラアルテミスアルに「何があった?」とか「吐け」と一言問うだけで改竄した記録を復活させてペラペラと報告する口を割ることになるだろう。

 それ程『主任』の権限は絶大ということだ。


 ◇



 と探索者になってから五年もいる自分としては、多くの実体験から「決まりを破る」といった選択は浮かばない。

 などと考えている内に真っ白だった球体モニターが突然真っ黒に変わるとコックピットも暗くなる。

 代わりに星々の明りと豆粒ほどの大きさの基地ホーム、そして青々とした惑星と輝く主星が映っていた。


 この景色は探索業務から帰還したらほぼ必ずと言ってよい程見掛ける馴染みの景色。

 何故なら『跳躍』には衝突などの事故防止の観点から所属に関係無く、速度やルート、更には停止区域まで事細かく、数多くの決まりが存在している。勿論「探索部だから」といった例外は存在しない。

 なので帰還時の位置も各艦ごとに決まっているので毎度同じ景色を眺めることとなる。


 とそこに空間モニターが一枚現れ次の一文が表示される。


 〈基地との情報連結が開始されました…………他艦との情報連結が開始されました〉



 ──基地ホームが先か。どうやらビリだけは免れた、とは言ってもコンマ何秒差だね。まあそいつがビリとは限らないけど。



 誰かは知らないが恨むなら主任を恨んでね、と頭を切り替えて進行方向に目を向ける。

 先程は豆粒ほどの大きさだった銀色の球体は自分が所属している探索部の基地でもう目前。


 報告からも分かるように、現在その基地と艦との間で膨大な量の「情報のやり取り」を行っている。

 これは探索部内の取り決めとして、基地や関連施設、更には所属艦や輸送船と、電波が通じていなかった相手と出会った場合、電波が通じた段階で「情報のやりとり=情報連結」を行う決まりとなっている。

 因みに『情報連結』とは情報の共有化及び並列化を目的としている為、部外の組織とは行わない。


 その情報だが広大な宇宙空間で「情報を運搬」する手段は大まかに二つ。

 一つは電磁波を使う。これは相手との距離が近ければとても有効な手段だが、なにせ送れる距離が短いのと伝える量と速度が限られる。なので数光秒といった近距離での情報伝達手段として昔から使われている。

 デメリットとして情報の欠落が起こり得るくらい。


 もう一つは情報を持って移動する。

 今や当たり前に使われている「反重力推進」や「跳躍」といった移動手段を利用する。これなら情報の欠落や変質は起こり得ない。

 現在宇宙に散らばる人類はこの手段によって繋がれており、網の目に張り巡らされた定期便の恩恵によりどこに住んでいても正確な情報が届けられる。


 余談だがもう一つ、距離と時間を完全に無視した情報伝達手段が存在する。それは先程エマが使った、探索者の固有能力である『繋がりリンク』を使用する方法。

 これはかなり特殊なやり取りなので今は割愛。


 その情報連結している相手はBエリア基地。我々が『ホーム』と呼んでいる直径1kmの完全な球体型。

 でその脇に浮いているのは『惑星ドリー』で「地球型」の有人惑星。比較的新しい部類に入る植民惑星。



 で、もう一枚現れた空間モニターの中で、眉間をピクピクとさせている女性が姉で……ってヤベー……珍しく怒ってるわ……






 着艦後、今回は全員帰還しているということで探索者はこのまま解散。夜に行われる対面式の『報告会』までは自由行動とのことで、報告はアルに任せてそのまま更衣室へ。

 更衣室にてエリーと合流、着替えてシャワーを浴びてから基地内にある自室へ一旦帰宅する。


 その際に全員の順位を聞かされたが、いつもとは異なる順位に頭の中で「?」が浮かんだが「ビリじゃないからまっいーか!」と口にしたら「あと数秒遅ければ私達がビリだったの!」とエリーにドつかれた。


 程なく時間となりエリーと一緒に「報告会場」へと向かう。

 以前は全員帰還後に作戦会議室にて行われていた「報告会」だが、今回からとある事情により「特別会場」にて「あるイベント」と共に行われることとなった。


 その経緯だが我がBエリア基地では以前から、が帰還時刻を過ぎても帰って来ない事態が多発、さらに予定時刻を二十時間もオーバーする猛者まで現れた。


 毎回計画を立案するのは主任。

 探索者個々の能力や性格を考慮し探索区域の選定を行っており、特に無理難題な任務を言い渡している訳ではない。にも拘らず「特定の者達」の帰還が遅れ始めたのだ。


 サラはここで考えた。


 遅くなる者は決まった四組。内二組は三十分程度と誤差の範囲だし、そいつらが遅れる「理由」は知っているのであまり強くは出れない。


 問題は残る二組。

 その内の若い一組。こちらは姉の方から事前に話を聞いていたし、その件は追及はしないと決めたがこれがいけなかった。


 残る一組、いやエマ一人だが完全に艦を私物化させているのはどうにも許せない。


 私にバレていないとでも思っているのか?

 しかも事もあろうか艦の中の改造までし、それに共感した皆も真似し始めてしまった。


 教育担当という立場を忘れた暴虐無人な振る舞い。許せば若い探索者に示しが付かない。


 ここは一発ガツンと……と思うのだがあの姉妹には常にラーナとローナの影がチラついている。

 さらに若い一組の妹の方が帰還が遅く、そちらを咎めていないので強くは出れない。


 ならばと直接行動に出るのではなく、回りくどいやり方で全てを解決しようと考えた。

 思いついたのは帰還後に開いていた報告会と、その後に必ず開いていた「飲み会」を一つに纏める。


 早速、今回の作戦開始直前に行うミーティング時に「今回から報告会を飲み会場である居酒屋で行うこととする」と発表すると、様々な思惑からか探索者達部下の一部が色めき立つ。


 よしよし食いついて来たな、と心の中でほくそ笑みながら次の宣告をする。


「尚、飲み会の費用は今までは部が持っていたが、今回から帰還が最も遅かった者持ちとする。これに関して異論反論は一切受け付けん!」


 その宣言を聞き、先程とは違う者達が青褪める。


 サラが考えたアイディアとは、帰還の順番で最も遅かった奴らペアに報告会での飲み物代を全額負担させる。

 ただ初回だから、今回は飲み物だけとし、改善が見られなければ全ての費用を負担させよう。


 実は他にも理由があった。

 探索者が作戦行動中はエリアマスターを含め基地勤務職員は全員指令室内待機が決まりとなっている。

 つまり誰か一人でも帰って来ない者がいれば解散とはならない。


 作戦には基地勤務の職員も含まれる。彼女らの中には隣にある惑星から通っている者もおり家族がいる者もいる。

 つまり報告会が遅くなればその者達の帰宅も遅くなってしまうのだ。

(因みに探索に掛かる時間は出発から帰還まで大抵は三時間内で済ませられるよう考慮してある)


 今までは全員帰還後には「報告会」を行うのが決まりであったが、その後に開かれる飲み会も定番化していた。

 この飲み会は特段の用事が有る者以外は強制参加。

 なので帰還が遅ければ遅い程、飲む時間が削られて……では無く休日が減ってしまう。


 そして今回の「報告会」に使われる会場だが、探索部の基地の中には基地で生活している探索者や職員、地上に降りなくても済むようと娯楽から飲食店、福利厚生が設けられいる。

 なので他人の目を気にしなくて済むし、帰る手間も掛からない。

 しかも肝心の「報告」だが『情報連結』にて情報共有されており、基地職員各班長を通して報告が上がってくる。なので改めて話し合い必要性は(実は)全く無い。



 ◇


 ここで基地の説明を少々。


 このBエリア基地は「ドリー」という名の地球型惑星の静止衛星軌道上に置かれている。

 直径1kmの『流体物質』で覆われた球体型の基地で、主任と探索者を除けば人は各科の班長である職員が八人と極端に少ない。

 その少ない人数をカバーしているのは、基地AI制御の自律型特製人型アンドロイド。日々昼夜を問わず黙々と作業を行なっている。


 基地に配置されているアンドロイド達は全て一体ずつ、人と同じく、異なる容姿・性格付けがなされており、擬似人格を付与してある。

 これは人が少ない(いない)基地内ならではの光景で、特に住み込みで働いている探索者と職員のストレス緩和が目的。

 例え「人では無い」と分かっていても「人」が身近にいれば「一人では無い」と安心するものだ。


 因みに探索部以外のアンドロイドだが、同じ職種なら同型が基本。職種が違うと形状や仕草・話し方も変わる。

 また全てのアンドロイドは政府(現在の国の様なものは存在せず、1組織の政府によって全人類は管理・運営されている)によって作られている「政府の所有物」であり、人の為に作り出されたので「道具」扱い。


(このアンドロイド達に関しては後々に類似の説明があります)


 ◇



 基地内にある「報告会」と称した催し物に集まった合計二十五名は思い思いの席に座り、隣の人と雑談を始めた。

 ここは娯楽施設の一つであるレストラン。見た目は……大昔に地球に存在していた「ニホン」という国にあった「イザカヤ」風。

 他にも「客」がいるような効果音まで流れている。

 誰の趣味かは……言うまでもない。


 アンドロイド店員が忙しそうに飲み物のオーダーを取りながら皆の席を回る。

 この店はアナログな方法で少し面倒くさいが、主任のお気に入りだから文句を言えない。



「ルイス&ルークに乾杯!」


「「「「乾〜杯」」」」


「ご馳走さま」

「ルイスもルークも景気がいいわね〜」



 我慢できなくなった私は主任の妙に長い演説を遮り乾杯の音頭をとった。

 皆も待ちきれなかったようで、音頭に合わせ杯を掲げる。

 中には今回の主役であるルイス&ルークペアに感謝の言葉を投げかけている者もいた。


 一方、遮られた主任は一瞬口をポカーンとしていたが、直ぐに思考が再起動したのか、赤い顔をしながらこちらを睨んできたので目を逸らして回避する。


 この場には主任と職員八名。そしてBエリア所属のがいる。

 我々探索者は他エリアも含め、全員漏れなく「一卵性の双子」だ。

 双子でなければ探索者には成れない。他にも様々な条件があるが、この条件をクリアしていないと探索者には成れない。

「一卵性の双子」は、稀にローナ姉妹の様に目に見える違いがある者もいるが、神経衰弱が成り立つ程に外見は似ている。

 なので、誰と誰がペアかは一目瞭然。



「いつも一番遅せー奴が何で一番早く帰ってやがんだ!」



 ルークが「ヤキトリ」三本に噛み付く。

 殆ど噛まずに飲み込むと目の前に置いてあったレモン水を一気に飲み干した。


 ルーク兄弟は二十七才。Bエリアの探索者メンバーの中では最年長で探索者としては一番の古株。

 二人とも今日は深藍色のジーパンを履いているが、弟のルークは普段から馴染みの格好であるボサボサ頭の金髪の色白で、上着は何故か派手なアロハシャツにピンク色のビーサンという井出達。

 兄であるルイスは黒髪アフロの色黒、モスグリーン色のYシャツを着て素足で黒の革靴と普段通り。

 仲間の中では一番の大柄。体格は少し胸板厚めの体育会系。


 そのルークの文句に対し「えへ♡」とウインクしながら舌を出し、右手を軽く握りながら自分の頭を軽く叩いて挑発する少女。

 ルーク達が奢る原因となった一人であるエリス。


 エリスと姉であるアリスのペアは十八歳。

 二人は他のペアとは違い、顔だけではなく外見も見分けがつかないくらいに髪型から特徴的な服装、仕草・声まで全く同じ。

 身長はエマよりも小柄で色白の可愛いお人形さん。


 今日は二人とも金髪を後ろで結っており、服装は……赤白黒系統で丁寧に纏めている所謂「ゴスロリ系」で、体型は服のお陰で分かり難いが起伏はあるとは言えない。

 似すぎて無言で並んでいると見分けがつかない。

 ただ性格の違いから話せば判断は可能。


 二人は性格が異なり、妹は明朗活発。姉は物静かなお嬢様。

 その姉は皆がいるテーブル席ではなく、カウンター席で主任であるサラ(33才独身)と、皆に背を向けて二人で何やら話し込んでいる。


 ルイス&ルークにとっては、このペアのせいで奢る羽目になったと言っても過言ではない。

 何故なら二番目に遅いエマでも普段は三時間遅れ。

 で一番遅いエリスに関しては、最近は平均して十四時間以内に戻ってこなかった。


 この二人ならいつも通りにしていれば最下位にはならないだろう、と高を括っていた。

 その判断が間違いであったのはエリーにも僅差で負けたのは「舐めていた」からに他ならない。


 だが納得はいかない。 なにせ今月は色々欲しい物があり出費を抑えたかったからだ。



「えへ♡ ……じゃねぇーー‼︎」


 とテーブルを叩きながらエリスを睨む。テーブルは震度三に見舞われる。


「これで食い物まで持たされたらお前破産してたな」


 相方のルイスが「オトオシ」を箸で器用につまみながら呟く。

 初回の試みという事で、今回は飲み物の負担だけで済んだ。


「全くの同意だ!」


 買いたい物は次回の給料日以降に考えることになる。


「ルークさん、今日は飲まないんですか?」


 ルークが顔だけ器用に向けると、ラーナが申し訳なさそうな顔を向けていた。

 その隣には姉のローナが何かを無我夢中で食べていたが敢えて見ない様にする。


「あ? あ〜今日はそんな気分じゃねーんだ」


 と捨て台詞を残し顔を背ける。


「ルークはプレゼントが買えなくてスネてるの~♪」


 言ったのは行儀良く食を進めるローナ。顔は料理に向けたまま。

 その声にぎこちなく顔を背けるルーク。


ラーナ貴方も何年コイツらと一緒に仕事してるの? いい加減行動パターンくらい読みなさいって♪」


 軽い口調だが上品な声で呟いた。

 するとラーナ冷や汗を流し始め、慌ててローナから目を逸らし、明後日の方に目を向けた。

 ローナはそんな二人の反応を気にせずに食事を続ける。



 ローナ&ラーナペアは二十五才。の探索者。

 この二人は探索者では珍しく、顔・髪色は同じだが体型が異なる。

 まず身長が姉のローナは小柄だな中々の体型をしているが、妹のラーナは平均的な身長と体格と異なる。


 性格も異なり姉は後輩の面倒見は良いが、必要以上は関わらない。端的に言えば我が道を行く女王様タイプ。

 但し、不義は嫌いで仲間との間で交わした約束事を破ったことは無いと、Bエリアここの探索者のまとめ役。


 片や妹はややこしい「二重性格」をしている。

 言い方は悪いが外見上は目立つ所がない。その代わりに、性格は良く周りに気をつかえたり、空気を読んで場を変えてくれたり出来る等のノホホーンとした面倒見の良いお姉さん。但し姉の不在時に限りだが。


 二人とも赤毛で少し黄色がかった肌。特徴的な赤毛は一緒。


「え〜誰に〜あ・げ・る・の?」


 エリー(二十三歳)が腰まであるライトブラウンの軽いウエーブのかかった髪を指で弄りながら、アルコールで少し赤くなった顔でワザと挑発し聞いてくる。

 この私の姉も妹同様に起伏は抑え目。だが努力の末に「お姉さん系の色気」を身につけたので、私とは外見は似ているが雰囲気は異なる。


 その姉の一言で周りが静まり返る。

 にやり取りを見守っていた後輩達の視線がルークに集まる。


 すると一番遠くにいる筈のアリスが妙な空気を察して何事か? とキョロキョロし出す。

 アリスの隣にいる主任はやり取りを「見ていた」らしく天井を見上げて呆れ顔をしていた。


「ふっ……知りたいか?」


 とニヤけ顔でエリーを見る。

 その隣では呆れ顔のルイスが酒を飲んでいた。


「うん、知りたい」


 私がすかさず乗る。勿論理由は知った上で。

 するとローナのため息が聞こえてくる。



「生体管理班の……アンリちゃん……」



 答えを聞き全員固まる。

 固まった原因は半数は「誰?」と調べ出し、半数は「あらら」と。

 ただ直ぐに全員が「アンリちゃん」が誰なのかを突き止めたらしく、皆が同じ反応をした。


「プ、プ、ハハハハハ」

「また〜?」

「何度目〜?」


 ローナ以外、目から大粒の涙を流しながら大笑いしている。


「うっせー! いいだろーが!」


 確かに誰にも迷惑は掛けていない。


「ルーク最強ーー!」


 私は「テバサキ」を持つ右手を突き上げ叫んだ。


「ルークさん……」


 ラーナがレモンサワーを胸の前で両手で持って憐れみの目を向けている。


「ルークは〜今日も〜平常運転〜」


 エリーがお腹を抱えて両足をバタつかせながら笑う。


「ルークのお笑いレベルが上がった♪」


 ローナが焼酎を飲みながら興味なさそうに呟く。


 主任は……立場上知っていたのだろう、頭を抱えている。隣にいるアリスはそんな主任を不思議そうに見ている。



 ルークの思い人であるアンリちゃんとは……アンドロイド。つまり人ではない。



「健気なルークに〜カンぺ〜イ!」



 エリスが満杯のビールジョッキ(大)を高く掲げ口に「スルメ」の足を咥えながら締めてくれた。



 報告会は三時間でお開きとなった。

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