「あの……」私は不思議そうにその男の人を見ていた。懐かしいような、それでいて見知らぬ人のような、そんな曖昧で漠然とした印象。

「悠花がいなくなったって、聞いて、心当たりは聞いたけど、誰も、今日は、見てないって、言われて……」乱れた呼吸を整える余裕もなく、私の目の前の人はそう話した。


個性的な顔立ち、という形容詞が当てはまるか分からないが、街中を歩いていたら必ず数人の異性の目を引く存在である事は容易に想像がついた。短くカットした髪に、少し下がり気味の目、浅黒く焼けた肌、それらが全て独特の雰囲気を出している。背はそんなに高くはないのだろう、悠花との身長差は二十センチくらいだろうか。それすらも計算に入っている様な佇まいだ。


今、その人物は悠花の心配をして、この公園まで駆けつけて来てくれたのだ。しかも、悠花本人が何処にいるのか把握してない状況である事をも、熟知している。

悠花は、持っていたメモを見て「かいと、さん、ですか?」と少し躊躇いながら、尋ねた。


海斗は、もう慣れた、という様子で「そうだよ」と答えて微笑んだ。

「付け足すなら、悠花と俺は夫婦、って事だよ」ちょっと不安感がひょっこり顔を覗かせそうな、そんな口調で話した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る