第21話
翌日18時
俺はテレビの前に座り、目を閉じた
宮崎奏の第一声が耳に届いた瞬間
しっかりと瞼を開けた
「本日はお集まりいただきありがとうございます
重要な報告があります
先日発表致しました【空 sora】は私ではなく他の方が書いたものです。
以前、読ませていただいたものがあまりにも印象深くそれを今回の舞台化の作品とさせて頂きました。
私が書いたものではございません」
「それは盗作ということですか?」
「そういうことになりますね
申し訳ありませんでした」
「ではそれを書いた方は?」
「まだ本人の許可を取っていませんので、
ここで実名の公表は避けさせて頂きます。」
「舞台は中止なんですか?」
「中止にはしません。
先日オーディションを勝ち抜いた新人俳優 石原慧を主役とし、予定通り行います。
いつの頃から歪んでいってしまった私の心に真っ直ぐな光を差し込んでくれた素晴らしい人間です。
そして、この作者である方は昔、がむしゃらにペンを走らせていた自分を呼び起こしてくれたとても純粋な素敵な女性です」
「愚かな私を許して頂こうとは思っていませんが、この舞台だけは続行させて頂きたい。
どうぞ、皆様のご理解のほどよろしくお願い致します」
俺をまだ使ってくれんのか...
凛の作品を演じることが出来るんだ
俺と凛の宝物を守れた
嬉しさと安堵感で一気に力が抜けてきたけどと同時に舞台への意欲が湧いてきた
今日帰国する凛を迎えには行かず、俺は稽古場へ戻った
半年ぶりに帰国した
空港に着くと懐かしい顔
自然消滅してしまった彼が出迎えてくれた
「凛、おかえり」
「どうしたの?」
「ハハ、そんなびっくりすんなよ。
未練がましく付きまとったりしないよ」
「いや、そういう訳じゃ」
「凛の気持ちが俺にないことぐらい、付き合ってた時からわかってたよ」
「...そうだったの?」
「そうだよー。今日は凛が知っておかないといけないことを話に来た。よーく聞けよ」
「うん」
彼が話してくれた私がいなかった日本で起きていたこと
先生のこと
慧のこと
聞いてるうちにどんどん胸が苦しくなって涙が止まらなかった
「凛のこと、本当に大切に思ってくれる人がいたんだね」
「ゥウ...私...これから、どうしたら...」
「簡単なことだろ?
今、誰に会いたい?」
慧に会いたい...言葉にはしなかったけれど
彼を見上げると、伝わったようだった
ニコリと笑って言った
「今日の凛は俺が知らない人みたいだ。
でも、きっと、それが凛なんだろうな」
「ありがとう」
私はずっと会いたかった人の元へと
向かった
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