第19話
舞台の顔合わせ
初めて本を渡された
俺は本開いた途端
目を疑った
次々と始まった自己紹介の声は全く聞こえない
自分の番に来た時、何とか立ち上がってお辞儀するのが精一杯だった
ひと段落着いた時、
俺は真正面に座っていた宮崎奏の前にズカズカと近寄りキッと睨んだ
周りはざわめきだし、監督はただならぬ空気に慌てて俺の腕を掴んだ
「あんた!よく澄ました顔で座ってんな」
「おい、石原、先生に向かってやめろ!」
「いきなり、何ですか?」
「これ、この話は俺の大切な人が書いたものだ。お前が書いたんじゃない」
「な、何を言うの?」
「アイツ、凛は今、何処にいる?」
「凛...篠崎さんのこと?」
「そうだ」
「篠崎さんは今は上海に」
「そういうことか。アイツをあっちに行かせてる間に発表してしまえばいいってことか?最低だな」
「どうして?あなたは?」
「俺が1番好きな凛の小説なんだ。証拠はある。ちゃんと俺もこれを持ってるからな。【空sora 】だと?これは【fairy lover】って本なんだよっ!知ってるよな?」
「...」
「石原、とにかく、今日は帰れ。
他の共演者もいるんだし…」
制止したスタッフを振り払って俺はその場を去った
言い様のない怒りが込み上げてきて
全身が震えていた
fairy loverを読んだ時
空が明るみ出し、ソファで眠ってしまった彼女の頬にそっと口付けた
感動して泣いてしまった俺の涙が
凛の上に落ちて起こさないようにと
ヒヤヒヤしながら...。
あの日の情景を
俺は忘れられないんだ
忘れることなて...出来ないんだ
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