第12話
「ただいま」
「おかえり」
「慧くん...どうだった?」
「二つ返事でやるって」
「凛ちゃんのことは?」
「あー、クスクス、それも二つ返事で好きですって」
「なによー、それ笑」
「だろ?」
「私も凛ちゃんと会ったの。慧くんの気持ち聞くのが怖いって」
「そっか...でも、たぶん聞いたところで、あいつは凛ちゃんにははっきり言わない」
「ずるいなぁー、後悔してもしらないよー」
「男にもいろいろ考えがあるんだよ」
「ふーん、男も難しいねー。
劇団の話だって...ほんとは裕翔にってことだったんじゃないの?
慧くんに譲ったんでしょ?」
「美紀は何でもわかるんだな」
「当たり前よっ」
「確かに昔の俺なら飛びついてた
でもな、もう、いいんだよ。
別に諦めたとか、そんなんじゃない
もっと、やりたいこと見つけたんだ」
「やりたいこと?」
「やりたいことっていうか、もうやってるよ。小さな舞台だけど、俺にとってはどんな大きなホールよりも輝ける場所なんだ。
キラッキラの瞳をして一生懸命舞台を見つめる子供達の笑顔を作れる」
「裕翔」
「1人でも多くの笑顔を作っていきたいんだ」
「うんうん、そうだね。グスッ」
「何だよ、泣くなよ。まだ泣くのは早い」
「え?」
「美紀、これから、ずっと俺の隣にいてほしい」
「ひろ...と?」
「結婚しよう。俺達も笑顔いっぱいの家族を作ろう」
「...はい」
彼女の溢れる涙を拭うと泣き笑いしながら
俺の首に腕を回して抱きついた
暑いものが込み上げてくるのを隠すように美紀の細い肩、顔を埋めた
「愛してる」と囁くように言うと
何か言いたげな彼女だったけど、
声にならず、ただ、何度も頷いてた
今まで2人でたくさんのことを乗り越えてきた
きっと、これからもいろんな壁があるんだろう
けど、君となら...
永遠という言葉を信じられる気がする
そう、誓ったこの日
彼女の肩越しに見えた眩しいほどの夕焼けを
俺は生涯忘れることはないだろう
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