第9話
「凛?そろそろ...離してくんないと...さすがに」
「はっ、やだぁ、ごめんなさい」
「ククク、ハハハハー、そこまで焦んなくても、とって食いやしねぇーわ」
真っ赤になって俯いた凛にデコピンした
「いったっ」
「凛、書くこと...やってみろよ」
「うん!慧にそう言われたらやれそうな気がしてきた」
「俺の目に狂いはないって!」
「ありがとう
...慧は?」
「俺?」
「やりたいこと、やってみたいことあるの?」
「あるよっ」
「なになにー?」
「俺は舞台に立ちたいんだ。
だから、バイトもそれに繋がってるかな」
「なるほどー!そうだったんだね」
「慧、カッコイイし、絶対、夢叶うよ」
「カッコイイとかモテるとかそんなんじゃなくてさ、声や動き、全身で表現したことが観客にしっかりと伝わる俳優になりたい。
だから、映画やテレビに出る俳優じゃなくて、舞台俳優になりたい。
観る側の熱さを感じながら、演じたいんだ」
「そっかぁー。慧こそ、やってみろよ!なっ!クスッ」
「はぁ?偉そうに(笑)
凛に言われなくてもやってみるよ」
「うん」
お互いの夢を話す度に俺達はどんどん近くなった。
そして、伝えられない思いがどんどん膨らんでいった
4年になった頃
凛はバイトを辞めた
夢への1歩を踏み出したんだ
「慧、聞いて!
宮崎 奏の事務所でバイト出来ることになったの!」
「宮崎って。駿か?あおいか?」
「プッ、違うってー。
奏ぇー。私の大好きな作家さんなの。
実はダメ元でいきなり事務所に私の書いたものを持っていったの。
そしたらね、そしたらね、連絡があって、バイトに来ないか?って。
まさか、読んでくれてなんて、夢みたいー」
「よくわかねぇけど、凄いことなんだよな」
「うんうん。そうなのよぉー」
「良かったな
やっぱり俺の目に...はぁ?」
言うことだけ言ってそそくさと去って行ってしまった凛
ほんっと、アイツは夢中になると周り見えないんだよな
嬉しそうに歩いていく後ろ姿を見てると
凛がフワリと消えてしまいそうで...
急にどうしようもない淋しさが体中を息苦しい程に襲ってきた
彼女の小さな背中をただ呆然と見つめてた
凛...
俺達は
夢を見て
夢を追いかけて
そして、
いつか夢の舞台に立ちたい、立つんだよな
その時、
その場所から
先にはいったい何が見えるんだろう
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