第7話
ふぅーっと息を吐いた凛が顔を上げて
笑った
「慧、もう大丈夫!」
そう言って俺の胸を押した
「あー、ごめん、汚しちゃった」
ドロドロになった凛の掌と膝から血が出てる
「お前、それ、大丈夫じゃねぇだろ
送るよ。歩ける?」
「平気よー。慧、大袈裟なんだから」
よろよろと歩き出した凛の手を慌てて握った
ニコリとしてありがとって言うと
いつものようにテンポよく話し出した。
空元気だってことぐらいわかってるって
でも、俺はそれに付き合ってやったんだ
「これから、夜は1人で帰るな!わかったか?」
「クスッ、慧、お父さんみたいー」
「ふざけんな。また、アイツにつけられたらどうすんだよ」
「...はい......」
部屋まで送ってくれた慧
一応、お茶でもって言うもんだよね
って思って、勇気を出して言ったら、顔色1つ変えずにあっそう?じゃって普通に入ってきて。
そっか、女の子の部屋入るの慣れてるんだよね
「凛!薬あるか?」
「い、いいよ、自分でするから」
だから、そんなことされたらドキドキするんだから
「ねぇ、慧?」
「んー?」
「うううん、なんでもない」
「変なやつ」
落ち着いた顔で私の足に触れる慧はきっと
私のこと女として意識してないってことなんだって思った。
だからって、私は何を言おうとしたんだろ
「はい、出来た」
「ありがと」
「どした?他にも痛いところあるか?」
「ない」
痛いんだよ、ほんとは...
胸の奥がとても痛かったんだ
見つめられるだけで
熱くなった
指先が触れるだけで
心が跳ねた
「あなたが好きなんです」
声に出すことで思いが伝わるのに
こんなにも近くにいられる"今"を
失ってしまう気がして
臆病な私は大切な気持ちをコトバにしようとしなかったんだ
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