第5話
「遅かったなぁ」
「お待たせしてすみません」
「まぁ、可愛い子。慧くんの彼女?」
「ち、違います。私は」
「あら、そうなの?お似合いじゃないー」
「違います...」
ねぇ、何か言ってよ?って思ったけど
ふっと笑うだけの慧
「美紀、凛ちゃんをからかうなよ。俺は凛ちゃんを慧になんかやれない!」
「なんすか、それ!俺、酷いやつじゃないですか。しかも、裕翔さん、凛の何なんですかぁー?笑」
「とにかく、慧には...」
「はいはい、もういいから、早く食べよ」
「うわぁー、美味しそう」
「どうぞ、たくさん食べてね」
お似合いの2人
バイトの話や裕翔さんの昔話、とっても楽しい時間
お酒も進み美紀さんはかなり酔ってきた様子で裕翔さんにもたれかかって眠たそうにしてる。
そんな美紀さんを優しく抱き寄せる裕翔さん
そろそろ帰らないとな…
慧はあっちに行って勝手にゲームし始めてるし
「あのー、トイレお借りしますねー」
静かにトイレから出てくると目の前に慧が立ってる
「ん?慧、我慢出来なかった?どうぞ」
「バカ、違うって」
「え?」
「ほら、あっち」
慧が顎をクイって奥の部屋を指すようにした
「あ......」
「そんな見んなよ。
凛には刺激強いかな」
「な、何よ子供扱いして」
「へぇー、じゃあ、あんなキスしたことあんの?」
「どうして慧はいつも!」
「しっ、静かにしろって。
その口塞いでやろっかぁ?」
トイレの前に並んで座り込んだ
床についた2人の指が触れると凛はビクンとして俯いてしまった。
俺は触れた人差し指からゆっくりと重ねぎゅっと握りしめた
すると、凛はゆっくりと顔を上げて潤んだ瞳で言ったんだ
「慧……私したこと...ない」
「へ?」
「あんなの...」
「あー」
「だから...ね、
息は苦しくならないの?とか
どんな風に始めるの?とか
...思っちゃう」
「クス、凛って面白いよな」
「面白い...かな?
変だよね」
しょぼんとまた下を向いてしまった頭を引き寄せた
「なぁ、やっぱ、しよっか?」
「何を?」
「キスだろ」
「ぇ、ンン」
目を真ん丸にしてまた大きな声を出しそうな凛の可愛い唇を塞いだ。
胸を押す力は徐々に抜けてきて、だらんと落ちた腕の間に手を差し入れて強く抱きしめた
「ハァハァ」
「凛...息、出来た?」
「.出来...なかった」
「そっか、まだまだだな」
「ぅん」
薄暗い廊下で俺達は初めてキスをした
腕の中の凛の温もりと甘い香りは心を落ち着かせてくれた
まるで、俺の方が抱きしめられているような感覚で
とても安心した
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