第5話

多分あの後

僕は家に帰ってしばらくぼーっとしていたのだと思う、

気が付いたら、朝になっていて、

急いで支度をして学校に向かった。

学校に着くと、下駄箱の中に靴をなおしていた彼女と視線が合った。

彼女は僕に気が付き

「おはよう!華原君」と笑ってくれた。

「おっ、おはよう。」

僕はぎこちない笑顔で返してしまう、

でも彼女はそんなことは気にせず、先に行ってしまった。

「よお!かはーら!」

といってドンとぶつかってきたのは

これまた、男子いちばんのモテ男!と呼ばれる

中原智也という人物であった。

「よっ。おはよ中原」

僕もそういってドンと軽く背中を押してやった。

「いってえ!」とか冗談を言いながら笑う中原。

僕が彼と仲良くなったきっかけは単純だ。

彼から声をかけてきたのもあるが、

趣味が映画鑑賞という共通の趣味で

仲良くなったのだ。

彼はとても男気があり、何事にもくじけず、

皆と親しみ、教職員の先生方にも評価が良く、

誰からにも、すべて、完璧だ。中原はすごいと言われている。

僕自身も彼を敬っている。

「おはようー!」

そう言って中原が教室へ入るとたちまちクラスが明るくなる。

僕もそれに続き、「おはよう」と付け加えるようにいった。

中原が席に着くと皆が中原の周りに集まりワイワイと盛り上がる。

僕は、あの輪には中原が読んだとき以外に入るときは入るが

基本はいつも席につき、本を読んで大人しくしている。

そして、今日はちらりと彼女がいる席へと視線を移した。

彼女は相変わらず、複数の男子から話しかけれていて、

中原の周りにいる女子が

ひそひそと話し出した、

多分ひそひそレベルじゃなくて

彼女に聞こえるくらい大きく

「あいつほんと男好きだよね」

一人の女子が髪の毛をいじりながらそう言う。

「それね」

そしてまた誰かが共鳴した。

「ほんときもい、つーか。かわいいからって調子乗ってるよね」

中原の隣で座っていた女子が最後に締めくくり、

くすくすと笑っている。

すると中原が、

「お前らそういうのはやめとけって言ってんじゃん」

とぎこちなく笑いながら返している。

「そうだよ、中原の言う通り!」

「うむうむ。」

「だな。」

とほかの男子も中原の意見に同意する。

中原も彼女をある程度は気にしながらに返すのがいつものことだ。

「ごめんーっ。中原のそういうとこまじすきー」

と中原を見て火照ったような顔を向ける髪をいじっていた女子が言う

「わたしもー」

また共鳴。

「え?じゃあわたしもー」

乗りに乗る女子。

「わたしのがすきだしー」

と言いながら切ったない笑い声で手を挙げながら、複数の女子達が笑う。

「やめろよー」

中原は少し困ったように笑っていた。

そしてその一部始終を聞いていた、彼女にいる周りの男子どもが、

「あいつら。ほんときもっちわりい。上村さん、気にしない方がいいよ」

「そうだよ、ほんとただの嫌味だろ」

と笑っている。

彼女は、

「うんそうだね。。」

といつものように少し控えめに返している、


そう、このクラスは中原派と上村派(彼女派)にわかれているのだ、

そしてみてわかる通り圧倒的に中原派のほうが多い。

一応、僕もそうなのだから。

僕が中原につく理由はいたって単純である。

中原派にいると楽なのだ。

輪を乱さなければ、それでいい。

それだけだ。

多分、当の本人、中原はこのわかれた現状を何とかしようとはしているだろうが、。

彼は優しすぎるあまり、はっきりと言えないことだってあるのだろう。

全く、人間は難しいものだ。

そう結論を下し、

いつものように僕は本を読み続けることにした。

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