▼【座敷の外へ出る】

 

 いつの間に開いていたのだろう。そっと近寄り、手をかけてみる。あれほど強く引いても開かなかったのが嘘のように、襖はなんの抵抗もなくするすると動いた。


 とん、と軽く打ち止まるまで全開にすると、暗い廊下に座敷の明かりが薄っすらと漏れ広がった。顔だけ出すようにして、外の様子を伺う。

 

 やはり誰もいない。


 向かって右はすぐ行き止まりになっており、此処はどうやら一番端にあたる座敷らしい。進むなら左側へ行くしかない。流石に回廊の先までは照らせず、奥に行くにつれ暗闇が蟠っている。

 怖い。できることなら、この明るい部屋から一歩も出たくない。でも、いつまでも此処に居るわけにはいかないのだ。


「帰ろう……ぜったいに」


 励ますように声を出し、足を踏み出した。

 

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