▼【もう少し座敷に留まる】


 細く開いた襖の向こうには薄闇が覗く。まるで、さっきまではそこに誰かが居て、こちらを伺っていたかのように。

 そもそも、いつの間に開いていたのか。仮にこの家の者が開けたとして、何故こちらに声をかけなかったのだろう。


 この座敷に留まり続けるのが最善だとは思わないが、今すぐ出て行くのも危険な気がした。外の廊下からは物音一つしない。何かが息を潜め待ち伏せているような、そんな想像が脳裏をよぎる。

 

 襖の隙間から目を逸らし、反対側の壁際へと移動する。


 そこで、はたと立ち竦む。


「人形、どこへやったっけ」


 両の掌は空だった。


 呟きに応えるように



 ゴトン


   ゴトン

 

      ゴトン


 

ゴロロ‥‥‥‥‥



 既視感のある物音に、首を後ろへと捻る。

 先程まで手に持っていたはずの、奇妙な人形。と、同じように見える物が三つ、開いた襖の前にちょこんと鎮座している。そのどれもが首から上を失っているというのに、強い視線をそこから感じた。



「え」


  

 何だ、一体、なにが。



 《サガシテクレナイ丿?》

 《ズットココニイタイ丿?》

 

 誰、という問いは震える吐息に消えた。


 逃げようとして、けれど逃げ場がないことは知っていた。何故なら、もう唯一の出口は塞がれているから。


 後頭部に硬い感触が当たって、勢いよく背後の壁にぶつかったのだと分かった。それ以上は退がれないのに、足だけは必死に逃れようとする。


 明るい座敷、散らかった玩具。人形、人形、人形、人形、人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人 形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形 人形人形人形人形 人形人形人形 人形人形人形人形人 人形 人形人形人形人形 人形人形人形人形人形人形人形人形人形人形 人形人形人形人形人形 人形人形人形 人形人形

人形人形人形 人形



          

      

            ーーーーごとん、

 


        


 





❨イテモイイヨ

デモ

サガシテクレナイナラアナタヲチョウダイ❩





      ✺

            

                   ✺


 ✺    

      ✺      ✺


          ✺     ✺  

✺                        ✺       ✺ 


   ✺    ✺          ✺

✺             ✺

      ✺   ✺           ✺

  ✺      

          ✺      ✺

    ✺

           

            ✺       

✺         

          ❆end:✕✕✕遊び






―――――――――

🔽

 ❉もう一度目覚める

―――――――――――

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る