神々の諦観


 空間は果てしなく続き、時間の概念すらもない。

 そんな場所で、それは語りかけた。


 ――さて、これで一つ、収束を迎えた。干渉する機会はあまりないけど、今回はなかなか楽しかったよ。


 すると、それに応える声がある。


 ――お前はいつだって引っ掻き回すばかりだろうに。

 ――それが役目だからね。誰かがそうした役目を担わなけりゃならない。だったら、楽しんだもの勝ちだよ。


 本当に愉快そうなその声に、呆れたような声は言う。


 ――酔狂だ。だが、だからこそお前がその役目を担うのだろう。私には到底、無理だ。

 ――貴方だって、そうして見ているじゃないか。酔狂はそちらだと思うけどね。覗き見なんて悪趣味極まりない。


 そんな反論に、忍び笑いがこだました。


 ――まったく、その通りだ。しかし、私は見守ることしかしない。だが、それもまた役目だ。

 ――ああ、本当にね。世界っていうのは、けっきょくのところ、舞台の書き割りのようなものさ。

 ――お前はそれを書き換えるのが役目だろう。

 ――そんな大それたことをしてるわけじゃない。貴方が言うように、ただ役目を果たしているに過ぎないよ。おそらく、誰もがね。


 空間はしばらく沈黙した。


 ――まだ、見続けるの? 貴方は。

 ――ああ。それが役目であるからな。お前はしばらく休むのだろう?

 ――うん。干渉する機会があるまでは暇だからね。

 ――では、もう寝ておけ。


 またしばらくの沈黙の後、眠たげな声が問いかけた。


 ――ねぇ、思うんだ。これは誰かが作りだした世界で、人も、その運命も、私達神さえも、ただの役割に過ぎないんじゃないか、って。そんな世界に、意味はあるのかな?

 ――意味などないのかもしれない。だが、あるのかもしれない。それは、我々のあずかり知らぬこと。しかし、我々がすべきことは一つだ。

 ――役目を全うする、か。分かってるよ。我々はその為にある。分かって、いるよ……………。


 そして、今度こそ、空間は沈黙で満たされた。

 次の機会を待って。



人も、運命も、神々さえも――――――かくのごとく、世界は廻る。










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ザマァできずに追放されたら現代に蘇ったんですが!? 丘月文 @okatuki

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