第14話 彼女の展望


 よっしゃー! ついに、ついに、戸籍をゲットだぁぁぁぁーーーー!!

 信じられないような書類を手に、小踊りしちゃうよ!

 いやー、すごいね、マリアさん達。どんなテを使ったのさ。怖くて聞けないがッ!

 本当に何者なんだろうねー。

 ちなみに、マリアさんの名前は東雲真里亜さんでした。めっちゃ日本名。

 カズタカさんは安定の和孝って漢字。うん、安心するね!

 でもって、私はその二人に養子縁組してもらった国外の親戚の子―ドイツ生まれってことになってるね、ドイツ語喋れないけど―って設定らしい。

 つまり今の私の名前は、東雲シャリエールでぇっす!

 …………………え、何これ、ホントできすぎじゃない!? ってくらい、トントン拍子にコトが進んでるんだけど。

 罠? 罠かもねー!

 でも乗っかるけどねっ。

 だって、ぶっちゃけありがたいし。あと、マリアさんとカズタカさんの正体も気になるし。

 何せ、神様が顕現しちゃうようなお寺だしね。普通のハズがないよねー。

 んでもって、切実に! 解決しなきゃならない問題が差し迫っているので!!

 さっそくヒロに相談だー。

「ってことでね! 同棲していーい?」

「いや、もう一緒に生活してるだろーが」

「まー、まー、一応の確認ですよ、一応!」

 そうなのデス。次に私が欲しいのは、ずばり住民票!

 なのだー。

「というか、マリアさんとカズタカさんはここに住んでいいって言ってくれてるのか?

 その…………………戸籍だけとはいえ、母親と父親だろ?」

「うん! ヒロが良いって言うなら、住民票をこっちに移していいって!!」

 その際、なーんか「あっちにいてくれた方が色々と安心だから〜」なんてマリアさんが言ってたのが気になるけどね? それはもうこの際、置いとくよ?

「マリアさん達がそう言うんなら、俺はかまわない」

「そっか。ありがとう!」

「どういたしまして。つーか、本当にテンション高いな?」

「ふふふ、そりゃ上がりもしますよ!

 だって住民票だよ? しかも、マリアさんったら過保護だもんだから、保険証までくれるって!!」

 本当に、本当に、養子にしてくれて、しかもしばらくは不安だからって扶養にも入れてくれてるッ!

 ありがたいを超えて申し訳ないとか思っちゃうけど、これで私の野望はぐっと現実味をおびたんだよ!!

「あぁ、これで脱ニート!! できるかもっ」

 なのですよー!

 いつまでもヒロにお世話になっていられないもんね。

「いや、待て。脱ニートって、まさか仕事する気か!?」

「あったりー」

「だ、大丈夫なのか? そもそも就職できるのかっ?」

 うぐ、痛いとこ突くなぁ、ヒロよ。

「やってみなくちゃ分からないじゃん。ともかくさ、働ける条件は整うわけだし」

 うん、あとちょっとした小細工をマリアさん達としたので! 働くことについても、マリアさん達は応援してくれてるしっ。

 そんな浮かれまくっている私をヒロはジト目で見てる。

「なあ? この際だから、聞くぞ?

 お前って、本当は何歳なんだよ?」

「あ、バレちゃった? そーなんだよね、実際は十九歳なんだけどー、ほら未成年って面倒じゃない!

 だから、二十歳ってことにしてあるんだー」

「………………やっぱ、俺より年下なんだな?」

 あ、そこ気にしますか。

「嬉しくない? 十代女子と同棲だよ?

 少女漫画、乙女ゲーム、ギャルゲーだって定番の王道展開よ?」

「王道展開だろうが、十代女子に働かせて俺が大学通うって、何か間違ってるだろ」

「わー、ムダに紳士」

「ムダ言うな」

「でも、お金、そろそろ辛いでしょ」

「うっ」

 そりゃ仕送りだけだもん。辛くもなるよ。

 つーかねヒロ、自分のお金じゃないんだから、女に貢ぐとかダメでしょー。

「じゃあ、俺が働く」

「それもダーメ。ヒロは学生でしょ!

 本分は学業!! ただでさえ単位が危なくなってんのに」

「ぐぅぅぅっ!」

 知ってるんだぞー。無理してるの。

 だから早く自立しちゃいたい。本当はマリアさん達のあのお寺に住まわせてもらおうかと思ったんだけど、それは何故かダメってカズタカさんに止められた。

 マリアさんは「馬に蹴られたくないものね、うふふ〜」とか笑ってたけど。

 でもなぁ、ヒロに負担がかかってるのは確かだし。あと、クソ神様がヒロにまで目ェつけてるってのがなー。

 よく考えたら最初からでき過ぎてるんだよねー。元住んでたこの町に転移してきたって。しかも、ヒロはマリアさんと会った後。あと依子が失踪して一週間ちょっとっていう微妙な時間軸なのも。

 クソ神様が狙ってたとしか思えない。

 マリアさん達がどこまで関わってるのかはナゾだけど。

 だーかーらー、慎重に! 尚且つ迅速に!! 社会復帰するのだ!

「俺の話、聞いてないだろ」

「ないね! 聞いていても却下だけどね!!」

 きっぱり言う私にヒロは、それはもう深いため息を吐く。

「……………あんま、無茶するなよ?」

「了解です!」

 ヒロはまだものすごーく疑わしい目で見ているけど、私はヤル気でいっぱいだ。

 クソ神様の手の平の上だろーと、ここで生きていくんだもん。

 この世界で生きていきたいんだもん! だから頑張るさ!!

 現状がどうであれ、大好きな人の傍にいられるって、幸せなことだよね。現状がどうであれ!

 だから進もう。スキルアップしよう。

 こうして逆異世界転移した転生悪役令嬢は現代を生き抜いてゆく――――とか現実逃避してる場合じゃないね!

 まずは住民票! んでもって就活だッ!!

 ……………………………お仕事、見つかるといいなぁ。







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