413話 聖刀を超える聖刀
打倒じいちゃんを掲げた後、さっそく俺達はシュピレーン村、唯一の鍛冶屋のへと足を運んだ。
「ほう、懐かしいの……。それにしても、この様に様変わりしおったか。小僧の鍛冶場、中々に趣があるではないか」
我先にドアを潜り、鍛冶場を見渡すガイアのおっさん。
二百年以上前にこの地の、この場所で聖剣を作り出した名匠に褒められた。
それがもう、嬉しくて嬉しくて──。
「そうだろそうだろ! なんたってここの村人が、心血を注いで復旧、改造してくれた鍛冶場なんだ、俺の要望が全部詰められてるから……」
そんな彼の後に続き、俺も鍛冶場へと入る。
しかしその鍛冶場を見て、俺はつい言葉を詰まらせた。
「なっ!?」
俺が驚くのも無理はないだろ。なんたって──部屋の中に転々と、希少であるミスリルスライムの姿が見えるのだっから……。
「あ、主。おかりスラ、無事で何よりだったスラ」
七、八、九……一体何匹居るんだ?
「ミ、ミスリン? このミスリルスライム達は一体……?」
俺が問いかけると、ミスリンは呆れたように大きく溜め息をついた。
「何を言ってるスラか。これ全部、ボクの抜け殻スラよ」
「あ、あぁーなるほど。これはまた、見事な脱ぎっぷりで……」
願わくば、一ヶ所に決めて脱皮して欲しかったな……。
それでもこれだけの量を一匹で。文句を言う方が野暮と言うものだろう。
「まったく、小僧には驚かされる……。まさか希少鉱石をこんなにも準備しておるどころか、元となる臆病スライムまで飼いならしておるとは」
ガイアのおっさんの口の悪さに「ボクは臆病じゃ無いスラ!」っと、ミスリンが飛び出そうとするところを掴まえる。
そして肩にのせ、頭を撫でてやった。
「まぁまぁ、落ち着けって。それにしてもありがとうな、こんなにたくさん」
これだけあれば、人が扱う武器であれば素材は十分足りるはずだ。
まぁ問題は……。
「ふむ、材料は申し分ないの。だが小僧、具体的にどのような物を作るか、決まっておるのか?」
「──って、そもそもの言い出しっぺはおっさんだろ!?」
この人、俺を
まぁいい……。実の所、俺には一つだけ案があった。
「なぁおっさん、昔打った未完成の聖剣で、ラクリマの守り人に預けていた剣を覚えているか?」
「当然じゃ、よもやココでその話題が出ようとはな……。して、それがどうしたと言うのじゃ?」
「実はその聖剣が……意識を持ったんだ」
その案とは、シンシの復活。
どのみち俺は刀鍛冶、当然打つのは刀。
そして聖刀の相手には、同じ土俵上の聖刀で対抗しようと言う事だ。
「なんと! そうか、精霊が目覚めおったか……」
「でもその剣の精霊……シンシって言うんだけど暴走しちゃってな」
「精霊……の暴走じゃと!? それは真か!」
「あぁ、仲間だったんだけど……。だから仕方なく、俺が聖剣事……斬った!」
何となく事情を察したのだろう。ガイアのおっさんの表情が曇った。
目を細め、遠くを見る様に──。
「ラクリマの事件か……。そうか、色々あったようじゃな」
と、しみじみと呟いた。
「あぁ、本当……色々な」
感慨深いが、今はそれどころじゃない。
運命的に全てが揃った今こそ、シンシを作り直す、またとないチャンスなのだから!
「だから俺は、シンシを打ち直して蘇えらせたいんだ。ガイアのおっさん、そんなこと出来るかな──?」
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