第386話 懐かしの面々
「船長……それにおやびんも……なんで!?」
残念Tシャツが優雅に風に舞う世界最速、唯一無二の船オールアウト号に船長が居るのは分かっていた。
しかし、その船に元男性であるおやびんが乗っているとは、誰が思うか? いや、思うまい。
あの船、搭乗員の変態成分過多すぎるだろ?
彼らの無事は、素直に嬉しい。
しかしそれよりこの後、彼等に絡む事を考えると自分の身が心配でならない。
「──それは後で説明しよう。戦友よ、まずは上がって来てくれ」
オールアウト号の甲板から、梯子が下ろされる。
しかしおやびんが、その先で手を広げ待ち構えているのだ。
うわぁ……心底昇りたくねぇ。
「って、言ってる場合じゃないな──」
俺は梯子を使い、オールアウト号に乗船する事に。
すると熱い
全身に鳥肌が立ち、背中には悪寒が走る。脂汗は額を濡らし、先ほど食べた携帯食が食道を登って来た……。
緊急事態とは言え、俺は深く深く後悔した。
「──やぁ、カナデ君。先ほどの空からの光は、やはり君だったか」
「ソインさん!? 何故あなたもここに」
まさかの知り合い続出に、俺は驚きを隠せない。
そんな時だ。船長が前に出て、ソインさんの肩を叩く。
「なんだいなんだい、二人は知り合いだったのかい? 彼女は、難民を乗せている我々の護衛をしてくれていたのさ」
そうか、周りの護衛船はリベラティオ騎士団の……。
「ここではまだ伝鳥が使えるからね。報告のため難民から事情を聞いていたら、さっきの怪物に襲われたわけさ。まさかカナデ君が、こちらの方と知り合いだとはね」
「以前に話した知り合いですよ。ソインさんの筋肉を見て思い出したって」
「あーなるほど、彼が噂の筋肉の君だったか。通りで立派な体つきなわけだ」
筋肉の君ってなんだよ……っとは思ったが、あえてツッコミは入れない。
話題に触れる事で、話がそれる気がしたのだ。
「いやいや、貴方こそ立派な腹直筋、腹横筋、外腹斜筋、内腹斜筋をしている。そこまで鍛えるには、眠れない夜もあったんじゃないかい?」
両者はその後、黙ったまま見つめ合うと互いに右手を出し合いガシッと腕組みを始めた。
暑苦しいので、心底やめていただきたい。
「ソインさん、そんなことよりトゥナは……」
「そう……君は彼女を追って来たんだね? 残念ながら、彼女はもっと先さ。私は後続隊として出発したからね」
「そう……ですか」
そんなに都合の良い話は無いよな……。
俺が肩を落としていると、おやびんが内股のその足で、筋肉二人の前に割って出る。
頬に手を当てながら、そして──。
「ところで貴方達。さっき沈んだ船の生き残りを、助けなくても良いのかしら……?」
っと、核心をついた一言を口にしたのだ……。
「「「あっ……」」」
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