第385話 直滑降
気付いた頃には、俺達はあっと言う間にオールアウト号のほぼ近くにまで到着していた。
「ありがとうククルカン、助かったよ」
「我は目的地に向かって飛んでいるだけにすぎん、礼には及ばん。ところでわっぱ……何をする気だ?」
何だかんだ言って速度を落として飛んでくれるし、今も高度を下げてくれている。
そんな彼には心苦しいが、今から俺はククルカンの言う所の、子を斬る事となる。
「貴方には悪いけど……俺はレクスオクトパスを倒さなければならない」
「……構わぬ、弱肉強食だ。それにあやつも厄災に変えられた身ゆえ、本来あるべき姿とは別。それよりわっぱ、主はいったい何をしておるんだ?」
真面目な話をしている中、俺はせっせと作業に勤しんでいた。
きっと、その事を言っているのだろう。
「見ての通り、ククルカンの指にロープを結んでるんだよ。ここに戻ってくるとき、船にあまり接近すると、皆が怖がるしな」
それだけ答えると、俺はロープの残りを下へと放る。
「これでよし! ミコ、準備は出来てるか?」
「勿論カナ! 丁度海の幸が食べたいところだったシ!」
「はいはい、分かった分かった」
ミコはニッコリと歯を見せ、無銘の中へと入っていく。
そして海上では、巨大な龍から逃げるように護衛に付いていた船は距離をとっていた。
あまりのんびりしていると、いつ船からの砲撃が来てもおかしくないな。
「高さは、五十メール位か……? クルルカン、俺達が飛んだら高度を上げて離れて居てくれ。帰りは、こちらから連絡をする」
怖くないと言えば嘘になる……。
しかし今、彼等を助けることが出来るのは、間違いなく俺しか居ないだろう。
「ふぅぅ……。じゃぁ、行ってくる!」
「うむ、時間が惜しい。さっさと済ませて来てくれ」
「あぁ、迷惑をかける」
それだけ言葉にすると、俺は重力に任せ前のめりに倒れ込む。
そしてククルカンの指の隙間から、宙に我が身を投げ出したのだ。
頭から水面に向かう俺の右手には、無銘の柄が握られている。
「ミコ、一瞬で決める。魔力を持ってけ!!」
『分かったカナ!』
風を受け体を起こす。そして、空の上で抜刀の構えを取った。
「
叫びと共に鞘から引き抜かれた無銘の刀身からは、二筋の巨大な熱線が飛び出した。
その三日月型をした光の刃は、いともたやすくレクトオクトパスの頭を、十字に分断したのだった……そして。
──ドボンッッ!!
っと、地味~な音と水しぶきを上げ、俺は海に落下……着水したのだ。
そしてその痛みで顔を歪めていると、海中に向かいゆっくりと沈んでいくレクトオクトパスが遠目に見えた。
すまない……安らかに眠ってくれ。
自ら手を下した海中の王族に
「──プハァ! いててて……思いっきり腹を打ったな……」
海面に顔を出し、漂う船の残骸だと思われるものにしがみついた。
すると目の前には、巨大な船が見える。
何とか無事に、オールアウト号を救うことが出来たようだ。
そんな事を考えていると、頭上からは二人の男が俺を呼ぶ声が聞こえた。
「──カナデちゃんじゃないの!?」
「──
訂正しよう。どうやら、一人は男とは呼べないかも知れない……。
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