第318話 材料
鍛冶場では数日間、何度も何度も金属がぶつかる音と共に火花が散った。
そんな具合で時間を費やし、挑戦と試行錯誤を繰り返して、俺は何本かの試作品の刀を生みだした。
そしてその数日かけて打った刀を、俺は順に覗いている。
悪い出来……っと言う訳じゃない、しかしこれらでは、無銘には遠く及ばない。
じいちゃんが生前、死ぬ間際に打った刀達。
手元に残すため、その中の一本を選んだときの不思議な力強さを、俺が打った刀達からは感じない……。
「なぁミコ。この刀、お前なら住めるか?」
「ん~……無理かな。その武器には、ボク達の居場所は無いシ」
……やっぱりそうか。
今までミコは、契約さえすればどの武器にも移り住めると俺は勝手に思い込んでいた。
しかし、どうやらそうではないらしい。
「じいちゃんは聖剣の製法を知っていて、無銘を打ったときにその技術を使った。そう考える方が妥当か……」
想定外だ。それでは何本打とうが、満足の行く結果は出ないだろう……これじゃ、シンシを蘇らす事が叶わない。
俺が行ったのは、あくまでも普通の刀を作る方法だ、闇雲に打ってても材料の無駄になるだけか。
「すまへん。きっとウチの力不足やわ……」
「いやルームが悪いわけじゃないさ、俺の力量不足もあるし、それだけが理由じゃない気がする。想定はしていたが、じいちゃんが打った無銘にはほど遠いな……それに使える材料にも限りがあるから無闇に挑戦できないし」
それにじいちゃんを越えるのもそうだが、優先的にやるべき事もある。
「シンシの復活のための聖剣を打つ製法を調べないとな……それに無銘を越える刀を打つにも
「玉鋼? なんやそれ」
ガイアのおっさんの娘が、玉鋼を知らないのか──ってことは、存在事態、少し絶望的かもな……。
「俺達の世界に、たたら製鉄って製鉄方があってな? 古くは足踏み式の鞴を使って木炭を燃やし、なるべく低い温度で砂鉄や鉄鉱石を還元し、純度の高い鉄を生み出す製法が──って、聞いてないだろ?」
下を俯き、なにやら考えこむルーム。
自分から話を振っておいて……俺、何か変なこと言ったか?
「なぁ、ルーム。この世界にたたら、なんて製法聞いたことがあるか」
「ん~聞いた事無いわ」
それもそうか。
もしかしたらじいちゃんが、この世界に製鉄方法を残したかも……なんて思ったけど。
ただ考えても見れば、いくらじいちゃんでも、刀匠であって製鉄職人ではない。畑違いだよな?
俺が物思いにふけていると、甚平の袖を掴み、ルームが引っ張った。
「ん? どうかしたのか?」
「いやな、兄さん。所でどうしてもその玉鋼じゃないとだめなんか?」
「ん? 普通の鉄だと炭素量の都合でだな……」
「いや、そうやないって。おとんから聞いたことあるんやけど、聖剣に使われた材料は同じ鉱石でも鉄やないで? 確か、他の鉱石を使ったって聞いた覚えがあるわ」
鉄以外の……他の金属?
まぁ確かに、正式には鉄でなく鋼って表現した方が正しいかもしれないけど……そう言う意味ではなさそうだ……って!?
「──そうか! そう言う意味なのか!?」
なるほど。
伝統に縛られた刀を作る事ばかり考えていて、視野が狭くなっていた……。
ここは地球とは違う世界。魔法があるんだ、俺が知らない未知の鉱石の存在があってもおかしく無いじゃないか。
事実、ステンレス製やダマスカス鋼を用いたの刃物も多く存在する。
「玉鋼を越える素材……もしそんなものが見つかれば──これは面白くなってきたぞ!!」
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