第311話 規格外
『助かりました、よもや魔族に生き残りがおり、
「石眼白蛇……あぁ、レクスバジリスクのことですか?」
どうやら、魔石を無くし慌てふためいていたドリアードさんも、時間が立ち落ち着きを取り戻したようだ。
「ってそれよりドリアードさん、今魔族って言ってましたよね……?」
疑問が残る。
わざわざレクスバジリスクをつれてきてるってことは散歩に来たって訳でもないだろう。
何か目的をもって動いている……そんな気がしてならない。
でも、想像通りなら何故──。
「魔族はあんな化け物を連れてまで、ここを襲いに来たんだろう……」
『きっと、魔石を取りに来たのでしょう』
魔石を? たかが魔力が漏れ出す、綺麗な石ころ一つだろ。
魔族は光り物でも集める習性があるのか?
「詳しく知らないんですが、あれはそんな貴重な物なんですか?」
ドリアードさんは下をうつむき、深く考え込む様子を見せる。
どうやら、答えにくい質問をしてしまったみたいだ。
『……手元に無い以上、隠しておく必要はありませんね。あの魔石は、過去の魔王……その核なのです』
「魔王の魔石? なんでそんな物を……」
『考えれる可能性として……魔王の復活を目論んでいるのでは無いかと』
「魔王の……復活?」
一番聞きたくなかったワードじゃないか……。
まさか、厄介事に巻き込まれたりしないよな? いくら勇者の血縁者だからって、じいちゃんの真似は出来っこないぞ。
それに──。
「そう言えば、グローリアの兵士も魔族と同行して……まさか、アイツらも魔王の復活に手を貸して?」
『魔族は人の心の闇に付け入る事を得意としております。その人族の王も、利用されている可能性は充分あるのではないでしょうか』
もしかして、勇者の召還に失敗したからか?
確かにグローリアの印象は他の国からも悪いものになっているらしいし、だからと言って……。
まぁ、こんな所で俺が悩んでいても仕方ない、ティアに連絡して、注意を促してもらおう。
「分かりました、俺から各国にも連絡が行くよう、手配してみます──所で……」
俺は、地面に転がっている五つの浄化石に向かい指をさした。
「こんな時に言うのは何ですが、そこの浄化石を頂く事は出来ないでしょうか?」
元々は、奪われた魔石を浄化するために使われた物だ。
それが無い以上、頼めば頂けるかな……なんて──。
『貴方は面白い方ですね。魔石が無い以上必要はありません、どうぞ全部御持ちください』
「──本当に良いんですか!?」
俺は彼女のご
マジックバックに詰めていくと、ふと疑問に思うことがあり、聞いてみることにした。
「そう言えば、今後ドリアードさんはどうするんですか? ずっとここで、さっきの魔石を封印していたんですよね?」
『私……ですか?』
ここに来るまでの綺麗にされた森、それはきっと彼女が行ったものだろう。
ただ長く生き続ける……それってきっと、精霊でも楽しくないよな?
「もし可能で、宜しければ……なんですが──」
◇ ◇ ◇
「──カナデさん! 良かった……ご無事だったんですね」
精霊の森を出ると、外にはシバ君とユニコーン達が、心配そうに俺を待ち構えていた。
「あぁ、レクスバジリスクは退治することになっちゃったけどな? それでも何とか、目的の物を手にいれることができたよ」
俺はマジックバックから浄化石を出して見せる。
「え? でも……」
魔石の事は俺の口からは話すのは止めよう。
彼らの不安を煽るより、各国の判断に任せた方がいいだろう。
「ドリアードさんの厚意だよ、ありがたく受け取ろう。じゃぁ、帰ろっか?」
「……はい!」
準備を終え、その後直ぐ俺達は精霊の森を後にした。
俺の提案通りなら、そろそろ──。
「カ、カナデさん!?
馬車の進行方向から右手側を見る。
すると、精霊の森の目印であった青々とした木々が、森伝いに南の山の方に向かい──動いていたのだ!!
「じいちゃんの友達に、ここまで会いに来るのは大変だしな。だからさっき、うちの村近くまで引っ越しを提案してきたんだよ」
ドリアードさんもその提案には、驚いた顔を見せていたが『この場所に固執はしていないですしね』っと、二つ返事で了承を頂いたのだ。
「そ、それはまた、規格外の話ですね……」
「だろ? 言ってみるものだ……って、世界地図が変わって怒られるかな!?」
ミコと、シバ君の笑い声が響く。
大きな不安は出来たものの、目的の浄化石と、新しい住人のスカウトが成功した。
俺にしては、中々の成果じゃないだろうか?
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